生活情報紙「さりお」の記事

「ここが知りたい漢方」より

「風邪には葛根湯」という誤解
漢方薬は体質や症状を踏まえてこそ本領発揮
 「風邪で葛根湯(かっこんとう)を服用したが良くならなくて…」と来局される人が少なくありません。
 葛根湯は、古典に「太陽病、項背強ばること几几(きき)、汗無く悪風(おふう)するは葛根湯之(これ)を主(つかさど)る」とあり、風邪などの発熱性疾患の初期に、首から肩にかけて強くこわばり、自然の発汗がなくて、風に当たって寒気を感じる症状があって、胃腸が弱くない人に適することが多い薬です。
 そもそも、漢方薬は「風邪には葛根湯」「女性の不調には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」などと、病名で選ぶものではありません。
 風邪を例にすると、発熱、悪寒、頭痛、鼻水、咳、痰などの有無のほか、胃腸の状態、その他のさまざまな条件に適する薬を選びます。
 本来の漢方薬の使い方であれば、このように飲む人の体質や症状である「証(しょう)」によって、薬を選んでいかなければなりません。
 昭和61年に「小柴胡湯(しょうさいことう)」という漢方薬が慢性肝炎での肝機能障害を改善すると発表されました。
 「証」によって「漢方薬が選ばれていれば、小柴胡湯の仲間である体力がある人向けの大柴胡湯(だいさいことう)、体力がない人には柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などが、同じように使用されていなければおかしいのです。
 しかし、実際の現場では、飲む人の体質や症状を考慮せず「肝機能障害には小柴胡湯」といった認識で漢方薬が扱われてしまいました。
 その結果、前年まで使用量がトップだった葛根湯を抑え、小柴胡湯の使用量がトップに躍り出たほどです。
 このような使い方をしても不都合なことがなければよかったのですが、残念なことに間質性肺炎という副作用が問題となってしまいました。
 その後、国も西洋医学とは異なる漢方薬の使い方があるとし、平成9年に薬の説明書である「添付文書」に、「患者の証(体質・症状)を考慮して投与すること」という一文が加えられました。
 このように、漢方薬が正しく用いられない結果で起こる不都合な症状を副作用と思われるのは大変残念です。
 現在は漢方薬が随分と普及しています。しかし、日本の伝統医学である漢方本来の使い方をされていることは、いまだに少ないものです。
 漢方薬は体質や症状を踏まえて、漢方という医学の考え方で扱ってこそ、本来の効果を実感することができるのです。