止血・止痛作用があるヨモギの葉 不正出血や妊娠 時の出血のときに使う漢方薬に含まれています
3月になると、ヨモギの新芽が出てきます。ヨモギはキク科の多年草で、日本各地に自生しています。
ヨモギは新芽を草餅(もち)や草団子に用いられることからモチグサとも呼ばれます。
私たちにとって、とても身近な植物の一つといえるでしょう。
ヨモギは食べるだけではなく、昔から民間療法としても利用されてきました。
生の葉の汁を切り傷の出血止めや湿疹の外用薬に用いたり、全草を入浴剤にして冷え症や腰痛などに用いたりしています。
また、ヨモギの葉の裏に生えている細かな毛は、モグサの原料としても有名です。
ヨモギの乾燥した葉を細かく砕いた後、ふるいにかけて葉や茎を取り除き、残って綿のようになった毛だけを集めたのがモグサです。
モグサの名は「燃える草」が由来という説もあり、日本では滋賀県伊吹山のモグサが有名です。現在は火を使わないお灸などさまざまなお灸がありますが、伝統的なお灸ではモグサが使われます。
漢方では、ヨモギの葉は艾葉(がいよう)と呼ばれ、漢方薬の原料として用いられてきました。
艾葉には止血作用や止痛作用があるとされており、婦人科の安胎薬や止血薬に用いられる漢方薬に含まれています。
艾葉を含む漢方薬としては芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)が有名です。
芎帰膠艾湯は、川芎(せんきゅう)、当帰(とうき)、阿膠(あきょう)、艾葉、甘草(かんぞう)、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)から構成される薬で、さまざまな出血を止めることを目的に用いられます。その中でも、特に下半身の止血に用いられることが多いようです。
この薬は、中国・後漢の時代に張仲景(ちょうちゅうけい)によって著されたとされる医学書『金匱要略(きんきようりゃく)』に次のように記載されています。
「婦人で下血する者、流産の後に出血が続いている者、妊娠している時に下血してしまう者、また、妊娠して腹痛がある時は、胎児の発育がうまくいっていないかもしれないため、芎帰膠艾湯で対応すればよい」
女性で不正出血が続く場合や、腹痛がして流産しやすい傾向にある場合などに、芎帰膠艾湯は昔から利用され、効果を出してきたということが分かります。
食べてよし、薬草にしてもよし。さまざまな場面で活躍するヨモギを発見して利用していた、先人たちの知恵には本当に驚かされます。