Q 心筋梗塞で亡くなった父と同様に、私も太っているので心臓の病気が心配です。というのも先日、階段を急いで上がっていると胸が苦しくなり、軽い狭心症と診断されました。良い漢方薬はありますか。 (60歳・女性)
A 狭心症は、階段や坂道を上ったときに、心臓が締め付けられるような痛みや圧迫感を感じる発作を起こします。
夜中に胸の痛みで目が覚めたり、明け方トイレに立った時に痛みが出ることもあります。発作は軽ければ数十秒、長くても15分を超えることはありません。
一方、心筋梗塞(こうそく)は、突然胸に激しい痛みが起こります。
血栓などで冠動脈が完全に詰まって血流が途絶え、心臓の筋肉が死んでしまいます。心臓に大きな障害が残り、死亡率が高い病気です。
これらの病気の最大の原因は、動脈硬化です。
血中のコレステロールや中性脂肪が増加し、動脈に蓄積して弾力が失われ、硬くなった状態です。そして内部にさまざまな物質がたまって血管の通り道が狭くなり、血流が滞るようになるのです。
動脈硬化は、10代から始まり、加齢とともに進み、40歳以上になるとほとんど例外なく見られます。要因はさまざまで、高脂血症、高血圧、糖尿病、高尿酸血症、喫煙、ストレス、運動不足などがあります。
また、更年期を迎えた女性は、女性ホルモンの減少で高脂血しょうや高血圧症になりやすくなるので注意が必要です。
漢方には、動脈硬化や高血圧に優れた効果を発揮するものが多く、狭心症や心筋梗塞の予防と症状改善に働くものもあるので、紹介しましょう。
まず、釣藤散(ちょうとうさん)という漢方薬があります。
釣藤、橘皮(きっぴ)、半夏(はんげ)、麦門冬、茯苓(ぶくりょう)、人参、菊花、防風、甘草、石膏(せっこう)、生姜(しょうきょう)の組み合わせです。
通常は、少し体が弱くやや神経質でのぼせ傾向のある人に、頭痛、肩凝り、目まいなどの症状改善を目標に用いますが、体質さえ合えば、高血圧症、心筋梗塞や狭心症の原因になる動脈硬化症、神経症、更年期障害など広範囲に使えます。
この漢方薬を現代医学の手法で調べると、血圧の安定作用に加え、善玉コレステロールを増やし、悪い中性脂肪を減少させて動脈硬化の予防に優れていることが分かりました。
漢方薬は一人ひとりの体質と症状に合わせて利用して初めて効果を発揮するものですが、現代医学の方法論でも漢方薬の効果が証明されつつあるのです。
このほか、よく使う漢方薬に、黄連河膠湯(おうれんあきょうとう)、黄連解毒湯、柴胡加龍骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などがあります。
強い発作には現代医学の強力な薬が有効ですが、現代医学と漢方の双方の長所を上手に利用してみてください。