膝の関節が痛み、正座ができない
Q 3、4年前から、歩くと膝(ひざ)に違和感を感じていたのですが、近ごろはかなり痛く、正座もできなくなりました。場合によっては、痛み止めを飲むこともあります。治りますか。 (44歳・女性)
A あけましておめでとうございます。漢方は記録に残っているだけでも2000年の歴史を持ち、先人の知恵と経験を積み重ねてきた医学です。現代にその処方を伝え、皆さんの健康に役立ててもらいたい気持ちから、今年も分かりやすく連載いたします。
さて、正月やお盆は親族が集まり、正座をすることも多いものです。血縁の間柄で、「最近は膝が痛くて…」とこぼすこともあるでしょう。
しかし鎮痛剤でその場しのぎを続けていても治りにくいものです。
歩くと膝が痛む、正座ができない、膝に水がたまる…といった症状は、「変形性膝関節症」といいます。
肥満気味の中年以降の女性に多く、原因が分からないことが多いのですが、症状を重視して処方する漢方薬はその点では期待できます。
変形性膝関節症によく使う漢方薬に、「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」があります。
その構成は、防已、甘草、朮(じゅつ)、黄耆、生姜、大棗(たいそう)という比較的簡単な組み合わせでできています。
一般的には、色白で、水太り、汗っかきの人によく使います。上手に使えば1、2週間で膝の調子が変わってきます。
症状を取ってしまうまでにある程度の期間は必要ですが、第一に副作用の心配なく関節を良い状態に保てれば鎮痛剤の必要もなくなります。
これに食事療法、理学療法を併用し、体重を減らして膝の負担を減らせば快方に向かうのが早いでしょう。
ただ、この漢方薬が誰にでも合うわけではありません。そのほかの漢方を紹介しましょう。
発汗が強く尿が出にくい場合は「桂枝加附子湯」を使います。
さらに朮を加えたものが「桂枝加朮附湯」で、関節炎や関節リウマチ、神経痛などにも用いられます。
口が乾いて疲れやすい、腹痛があり顔色が悪いときは「小建中湯(しょうけんちゅうとう)」を、同じく口の渇きを訴え、尿の出が悪いときは「八味丸(はちみがん)」を、さらに腰が痛いときは「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」が功を奏することがよくあります。
また、手足が冷える場合は、「苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)」や「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、さらに下肢全体が激しく冷える場合は「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」を。
上半身がのぼせる場合は「五積散(ごしゃくさん)」が良いでしょう。
西洋医学とは異なる漢方の優れた効果は、体質に合わせて使えるかどうか…が成功のカギを握っているといえます。