信頼を高めるためには扱う側が深く学び誠実に取り組むこと
利用する側は信頼できる専門家を見つけて適切な薬を試して
先日、県外のある薬局で、アレルギー性鼻炎によく用いられる小青竜湯(しょうせいりゅうとう)という漢方薬に、ステロイド剤が混ぜられていたことが分かりました。
10年に渡って販売していたようで、今回はその薬局に対し、2週間の業務停止が命じられました。
ステロイド剤は、副腎皮質(ふくじんひしつ)で作られるホルモンの成分を合成したものです。
多くの病気の治療薬とされており、その応用範囲の広さと優れた効果から「魔法の薬」とまで言われることもあります。
漢方薬は病人の体質や症状に合わせる必要がありますが、強力な西洋薬は、誰にでも効くために、目先の効果を期待するときには便利なものです。
しかし、副作用の心配もある西洋薬を混ぜて漢方薬の効果に見せかけるなど、言語道断です。
実は、ステロイド剤や利尿剤などを漢方薬に混入することは、50年も前から不謹慎な一部の薬局で行われていました。
今回の案件が10年も続いていたということは、まだ表面化していないケースも存在しているのではと、心配です。
本来の漢方薬を適切に使えば、わずか一服や数日分の漢方薬で著効を得る場合もあります。純粋な漢方薬は気持ちよく効くものです。
ところが、妙な西洋薬が配合されている漢方薬で得られる速効では、不自然な効き方が出ることがあるようなので、注意が必要です。
さて、西洋医学の資格を持つ医師や薬剤師が、日本の漢方のような西洋医学とは異なる地域の伝統医学を扱えるのは日本だけです。
このことにはよいこともありますが、半面、漢方の知識の有無に関係なく、資格さえあれば漢方薬を扱うことができることの弊害もあります。漢方薬を病名などだけで安易に選んで使っても効果を得ることがあるので、漢方を深く学ぶことをおろそかにする危うさもあるのです。
ほんの一部の人が漢方薬をいい加減に扱うことで、漢方全体の信頼が損なわれることは、非常に残念なことです。
漢方という経験医学の習得が難しいことも課題ではありますが、漢方薬を扱う側にも責任の一端があるのではないかと日頃から感じています。
健康食品やビタミン剤などのサプリメントを漢方薬と思い込んで飲み続けているケースは、現在でも少なくありません。
漢方薬本来の効果を得るためには、信頼できる薬局を見つけ、適切な漢方薬を試すことが大切です。漢方薬局のはしごをしてみるのもいいかもしれません。