さりお 寿元堂薬局の漢方よもやま話
桂皮や桂枝を使った先人の知恵
クスノキ科の樹木・ケイ(桂)。樹皮は桂皮(けいひ)と呼び、直径1㎝以下の若い枝を桂枝(けいし)と呼び、ともに漢方薬の原料として用いられています。
中国やベトナムに自生するケイの学名はシンナモム・カッシアという種類で、カシアと呼ばれています。
一方、アップルパイなどで用いることが多いシナモンは、スリランカやインドで採取されるセイロンケイヒであり、カシアとは別物です。
ヨーロッパでは、セイロンケイヒとカシアを区別して、セイロンケイヒを「シナモン」と称することがほとんどだそうですが、日本では両者をあまり区別せずに「シナモン」として売られていることが多いようです。
どちらも香辛料として使われますが、カシアの方が辛味が強く、シナモンの方が甘くてマイルドな香りです。
さて、桂皮と桂枝は多くの漢方薬に含まれます。
その中の一つである桂枝湯は、とても応用範囲が広い薬です。
桂枝湯は胃腸があまり強くない発熱性疾患(風邪など)に用いられる薬ですが、芍薬(しゃくやく)の分量を増やすだけで腸の不調に用いられる薬になります。
また、加える生薬を変えれば不安や不眠、痛みの症状を改善する薬などさまざまな薬になります。
多くの症状や病気に対応してきた先人たちの知恵には驚かされるばかりです。
症状がなかなか改善せず悩んでいる人は、一度漢方薬を試してみてはいかがでしょうか。