Q 数年前から歯槽膿漏(しそうのうろう)で悩んでいます。以前、歯茎が緩んで抜いた歯があり、今も別の歯を抜かないといけないと言われています。歯槽膿漏にも漢方が効くと聞いたのですが、本当でしょうか。 (68歳、女性)
口の中の治りにくい病気に漢方を
A 漢方でも口の中の病気に対応してきた長い歴史があります。西洋医学の進歩によって漢方の役割は随分減りました。
しかし、歯槽膿漏や口内炎に対する効果など、役に立つ素晴らしい価値も多く残っています
歯槽膿漏(歯周炎)は、歯を支えている周囲の組織が悪くなる病気です。
少しずつ進行していきますが、初期では、痛みや違和感を感じることはありません。ある程度悪くなると、歯茎(歯肉)の色が悪くなり、出血しやすくなり、歯茎が腫れて、押すと膿汁(のうじゅう)が出るようになります。そして、歯を支えている骨が破壊され、歯は抜けてしまいます。
つまり、痛みはあまりないままに、いつの間にやら歯がぐらぐらして、ついには抜けてしまうという病気です。
口の中にいる多くの細菌のうち十数種類が歯槽膿漏の原因となり、それらが増殖することによって歯槽膿漏が悪化しますが、個人の健康状態や歯の周りの清潔さなどに大きな影響を受けます。
歯槽膿漏の多くは漢方薬を飲むだけで改善し、出血や膿(うみ)がなくなり、緩んだ歯茎がしっかりしてくるものです。
私が歯槽膿漏に対する漢方の効果に驚いたのは30年ほど前です。たった数日間漢方薬を飲んでもらっただけで歯茎が引き締まって盛り上がるという信じられないケースを経験したのです。
ほかにも、歯槽膿漏が悪化を続けて1本ずつ歯を抜いていた人が、残り2本になったときから漢方薬を飲み始め、数カ月分の薬を飲んだだけで20年以上も症状が治まったことがあります。
1カ月もしない間に、緩んだ歯茎が締まったり、色が改善した人は少なくありません。
歯槽膿漏の改善には漢方が役立つことが多く、効果の試しの期間は、煎じ薬なら1、2週間から1カ月、顆粒剤や錠剤なら少し長引きます。
ではどのような漢方薬が利用されるのでしょうか。入手しやすい顆粒剤や錠剤の漢方薬を紹介します。もしこれらで効果が見えにくければ、専門家に相談して煎じ薬を試すとよいでしょう。
- 黄連解毒湯(おうれんげどくとう) 歯茎からの出血がじわじわと止まらないものに
- 甘露飲(かんろいん) 口臭があったり、歯茎が腫れたり痛んだりして、ただれている状態に
- 三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう) 舌が腫れたり、歯茎からの出血が続いたりして、便秘傾向の人に
- 六味丸(ろくみがん) 口臭があったり、歯茎が赤くただれたりして、足が弱り、時に口の中が塩辛く感じる状態に