Q のどが腫れているようなので気になっています。バセドウ病や橋本病など、甲状腺の病気が女性に多いと聞きました。漢方薬も効果がありますか。 (49歳・女性)
A バセドウ病も橋本病も、甲状腺ホルモンのバランスが崩れ、甲状腺機能が正常でなくなったときの疾患です。どちらの病気も、甲状腺が腫(は)れることがあります。
ただし、甲状腺ホルモンの分泌に関して正反対の病気なので、症状も薬も異なります。
【バセドウ病】 甲状腺の働きが活発になり過ぎ、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態を、甲状腺機能亢進(こうしん)症といいます。バセドウ病は甲状腺機能亢進症の多くを占める代表的な病気です。
甲状腺機能が亢進した体を例えれば、寝ていても走っているような状態なので、動悸(どうき)、息切れ、多汗などの症状があります。また、眼球突出やまぶたの腫れなどが見られることも。
初期の場合は、やる気がみなぎって仕事でも頑張りがきき、体調がいいと勘違いする人もいますが、悪化すると、疲れやすく気力が衰えてきます。食べても太らず、やせていき、急にしみが増えるといった症状が見られることもあります。
西洋医学では、甲状腺の一部を切除して甲状腺ホルモンの量を調整するか、甲状腺ホルモンの合成を抑える薬を続けて飲むことによって、血液中の甲状腺ホルモンの量を正常に保ちます。放射性ヨードを使ったアイソトープ療法もあります。
漢方薬も有効です。抑肝散(よくかんさん)、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) 、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などが用いられます。
【橋本病】 橋本病は、甲状腺の働きが低下し、甲状腺ホルモンが十分に作られなくなって新陳代謝が低下する、甲状腺機能低下症の一つです。症状も、身体症状が活発になるバセドウ病の初期症状とは逆に、疲労感や倦怠(けんたい)感、無力感などの症状が現れ、体重が増加します。
西洋医学では、甲状腺ホルモンの薬を飲んで血液中の甲状腺ホルモンの濃度を上げて安定させます。やはり続けて飲むことが必要です。
橋本病には、漢方では補剤が適しています。体がだるく、体力・気力が低下した状態を底上げし、補ってくれるからです。補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などが使われることがあります。
バセドウ病も橋本病も、漢方の体質改善の効果が喜ばれることが多い病気です。場合によっては、漢方薬を西洋医学の薬と併用することから始めるとよいでしょう。