Q もともとアトピー性皮膚炎があり、一進一退を繰り返していますが、夏になるとかゆみがひどくなります。漢方薬でよくなりますか。 (37歳・女性)
代表的な漢方薬に消風散があります
A 季節によって皮膚の状態が異なることは、皆さんご存知でしょう。
たとえば、寒い冬にはしもやけになりやすく、また空気が乾燥するため、肌がかさつき、あかぎれを起こすことがあります。
一方、暑い夏には汗や紫外線の影響が強くなり、皮膚に負担がかかります。また、夏は湿度も高く、細菌やカビが繁殖しやすくなって、皮膚の炎症が悪化することがあります。アトピー性皮膚炎も夏に悪化するタイプがあります。
アトピー性皮膚炎に限らず、夏に悪化する皮膚病に使われることが多い漢方薬に、「消風散(しょうふうさん)」があります。
これは中国の明の時代に著された「外科正宗(げかせいそう)」という古典に載る処方で、日本でも古くから使われています。荊芥(けいがい)、防風(ぼうふう)、蒼朮(そうじゅつ)、木通(もくつう)、石膏(せっこう)、知母(ちも)、苦参(くじん)、地黄(じおう)、当帰(とうき)、牛蒡子(ごぼうし)、胡麻(ごま)、蝉退(せんたい)、甘草(かんぞう)の13種類の生薬が配合されています。
そして、多くの場合「分泌物が多くてかゆみが激しい皮膚病」に使われるとされていますが、実際の応用には例外が少なくありません。
消風散といえば、即座に2つのエピソードを思い出します。
あるとき、全身に湿疹が出てかゆみに悩まされている60代の男性が寿元堂薬局に来られました。そして消風散を飲み始めたものの、次の日に症状が激しくなりましたが、そのまま飲み続けた結果、4~5日で見事に症状が引いたのです。
漢方薬を飲んで病気が良くなる過程で一時的に症状が悪化することを瞑眩(めんげん)と言います。古い話ですが、私が初めて消風散の激しい瞑眩を経験した例なので、今でもよく覚えています。
もう一つのエピソードは、はるばる関東からやって来た30代の男性の話。悪化したアトピーに悩んでいて数カ月間にわたって消風散の煎薬を飲み続けているが、効果が全くないといいます。彼が飲んでいる消風散を見せてもらいましたが、専門家の目で見ると、明らかに品質がよくありませんでした。
そこで寿元堂の消風散に替えて飲んでもらったところ、まもなく効果が現れるのを実感したとのこと。原料になる生薬の品質の良し悪しが、漢方薬の効果に大きな違いをもたらすことを示した一例です。
消風散以外にも皮膚のトラブルに使われる漢方薬はいろいろあります。専門家によく相談してください。