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皮膚の病気~ 漢方を試してみたい病気 ~

体の表面をおおう皮膚は、畳一畳くらいの広さで、体重の約16%の重さがあり、体外の様々な刺激から体を守っています。

皮膚の異常には、体外から直接皮膚に影響するものと、体内の変化が皮膚にあらわれるものがあります。
昔から「皮膚は内臓の鏡」といわれるように、内臓や内分泌に異常があるときに皮膚にも変化があらわれることがあるのです。
しかし外因性と内因性の区別がはっきりしないことも多く、両者が互いに影響しあっておこることもあります。

一時的な症状であれば西洋医学でおさめてしまえばよいでしょう。
しかし皮膚病は昔から治りにくいものが多く、ニキビやシミのようにポピュラーなものでさえ、出なくしてしまうには少し根気がいります。
さらに最近はアトピー性皮膚炎や慢性ジンマシンなど、治りにくい皮膚病がますます増えています。

そしてこれらの皮膚の病気には漢方が効果的なものが多く含まれます。

※漢方薬を紹介する場合は、一般的に入手しやすい範囲のものに限りました。

漢方を試してみたい皮膚の病気

シミ(肝斑)顔のシミ(肝斑)は多くの女性の悩みです。
目や口のまわりにできる褐色から黒褐色の不定形の色素斑で、時には広い範囲に広がることもあります。

漢方では瘀血(おけつ)が大きく影響すると考えます。
この場合の瘀血はホルモンの微妙なアンバランスのことですが、適切な漢方薬を続けて飲むと体全体のバランスが整い、シミもきれいに消えてなくなります。

ニキビ漢方ではニキビを面粉刺(めんふんし)などとよびました。
かつては青春のシンボルなどといわれたものですが、最近は大人のニキビが増えています。
ストレス、睡眠不足、ホルモンのアンバランスなどが影響しますが、女性はお化粧に注意しましょう。

漢方で即効の期待できるタイプでは1~2ヶ月以内に急速に症状が改善されますが、2~3ヶ月間は経過をみていくタイプも案外多いものです。

イボ昔からイボには民間薬のハトムギがよく効くことが知られていますが、通常はハトムギの皮を去ったヨクイニン(薬用)が使われます。

約3ヶ月を限度として試せばよいのですが、ヨクイニンでも治りにくいイボには漢方薬を併用するとさらに効果が高まります。

皮膚科の処置がいやな人やイボの再発を防ぎたい人によいでしょう。

アトピー性皮膚炎アトピー性皮膚炎は、アトピー素因といわれる遺伝的な体質に、環境的な要因が影響して発症します。

以前は子供の病気と思われていたものが、次第に治りにくくなっています。
ストレスの増加や環境の変化が影響していると思われますが、最近ではアトピー性皮膚炎の患者さんの数は莫大なものです。
そして「アトピービジネス」といわれる悪徳商法もあらわれ、無効ないしは非効率なものに不当に高額な費用を負担させています。
その中に「漢方」という言葉や「漢方薬」の製品が利用されることがあるのでご注意下さい。

本来の漢方はアトピー性皮膚炎に効果的です。
適切な漢方薬を続けていけば、次第に症状が治まりやすくなっていくので、根気よく続けましょう。

湿疹湿疹は皮膚病の中で最も多いものです。
湿疹が出やすい体質に、外部から何らかの刺激が加わったり、細菌が付着して発疹します。

外用薬などで簡単に治るものはよいのですが、慢性になったり、繰り返して出たりするものはやっかいです。
湿疹を出なくしてしまうには、やはり漢方がよいでしょう。
続けて飲むと次第に外用薬が不要になっていきます。

主婦湿疹主婦に多い湿疹なので主婦湿疹といいますが、調理師や美容師などには男女を問わずみられます。

炊事や洗濯などの水仕事で洗剤を使うことが多く、皮膚表面の脂肪がなくなり、ゴミなどの刺激を受けやすくなるためにおこります。
手の指に痒みや水疱ができて、乾燥が進むとカサカサして指紋がなくなります。

主婦湿疹のできやすい人にアトピー体質の人が多いといわれるように、体質の影響もあるようです。
しばらく漢方を試してみるとよいでしょう。

じんましん蚊に刺されたような盛り上がったかゆい発疹が出ます。
1~2週間以内に治ることが多いのですが、中には数ヶ月から数年続くものがあり、慢性じんましんといいます。

食べ物や動植物などが誘因となるアレルギー性じんましんが有名ですが、温熱や寒冷、ベルトやブラジャーなどの刺激、精神的なストレスなどによる非アレルギー性じんましんもあります。

最近は原因がよくわからないものが増えていますが、漢方は西洋医学的な病気の原因が不明でも十分に効果的です。

皮膚そう痒症表面的には湿疹などの異常がないのに皮膚が痒くなる病気です。

特に高齢者では、皮膚の表面を覆う皮脂と水分の分泌が低下して皮膚が乾燥し、痒みを感じることが多くなります。
70歳以上の方の半数以上が痒みに悩まされているともいわれます。

漢方には皮膚に潤いを取り戻す働きがあります。
上手に利用して症状を改善しましょう。

帯状疱疹子供の頃に感染した水痘(みずぼうそう)のウイルスによっておこり、神経に沿ってできる小水疱と強い痛みがあります。

胸や背中などにできることが多く、3週間から1ヶ月ほどでよくなりますが、痛みが残ることがあります。

通常3ヶ月以上経っても残る痛みを帯状疱疹後神経痛といいます。
治りにくく長びくことがあり、時には数年にも及びます。

高齢者や皮膚の症状がひどく、痛みが強いほど発症しやすいといわれています。

漢方は帯状疱疹にも効きますが、帯状疱疹後神経痛には特に効果的です。
多くは1~2週間で効果があらわれますので上手に利用して下さい。

乾癬乾癬は、頭やひじ、ひざなどに銀色のカサブタ(鱗屑)がついた赤い斑点ができ、痒みを伴うことがあります。
皮膚の細胞分裂が異常に早くなるためですが、原因不明で慢性化します。
多くは尋常性乾癬ですが、無菌性の膿疱が多数できるタイプを膿疱性乾癬といいます。

西洋医学に外用療法、内服療法、光線療法などがありますが、根治させることが難しい病気です。
しかし漢方が効果的なケースがあるので、西洋医学と併用しながら、しばらく試してみるとよいでしょう。

しろなまずしろなまずは尋常性白斑という病気で、漢方では白癜風(はくでんぷう)といいます。

皮膚のメラニン色素をつくる細胞の機能が低下して、肌の色が抜けて白い斑点状になります。
白斑は木の葉状、類円形、不規則な地図状を示すものなど様々です。

尋常性白斑には三種類のタイプがあるとされており、一個から数個までの白斑が身体の一部に出る限局型、全身の各所に白斑が出る汎発型、皮膚の神経に沿って出る神経分節型などです。

原因として免疫障害、自律神経障害、ストレスの影響などがいわれていますが、いまだに不明で治りにくい病気です。
時として漢方がよく奏効しますので、本格的な煎薬を試してみるとよいでしょう。

皮膚病によく使われる漢方薬

慢性の皮膚の病気や症状に有効な漢方薬は多数あります。

いうまでもなく、漢方薬は症状と体質に適するものを選べば効果的です。
難しい皮膚の病気を治すには、慎重に薬を選ぶことが大切です。

ここではよく使われる代表的な漢方処方の一部を紹介してみましょう。

温清飲うんせいいん皮膚が乾燥して分泌物が少なく、痒みが強い皮膚炎に使われます。
患部に熱感を覚えたり、赤みがある慢性のものによく奏効します。

処方中の四物湯(当帰、芍薬、地黄、川芎)は血行をよくして皮膚に潤いを与え、黄連解毒湯(黄連、黄芩、黄柏、山梔子)は血熱をさまして炎症を抑えます。

アトピー性皮膚炎、皮膚そう痒症、湿疹、じんましん、ニキビ、シミなどのほか、アレルギー性体質の改善にも応用される薬です。

桂枝茯苓丸けいしぶくりょうがん瘀血(おけつ)を去る漢方薬として有名です。
瘀血は、血液または血液成分の異常のことをいいます。

虚弱でない、多血質でのぼせ症の人のシミや肌荒れ、ニキビ、主婦湿疹などに使われます。
全身状態を整えながら、確実に効果をあらわしていくという漢方の特質が実感できやすい薬です。
女性に使われる機会が多く、月経不順、月経痛、子宮筋腫などを伴う人にも使われます。

柴胡清肝湯さいこせいかんとう明治後期から昭和初期の時代に、体質改善を重視して活躍された森道伯先生の創作です。
もともとは小児腺病体質の改善薬として使われ、またその体質者の諸病にも使われる薬でしたが、今ではいろいろな皮膚病に応用されています。

痩せ型または筋肉質で皮膚が浅黒い人に適することが多いのですが、青白い人にもよいことがあります。
また、くすぐったがりの人が多いようです。

十味敗毒湯じゅうみはいどくとう世界ではじめて全身麻酔による乳癌の手術をしたことで有名な華岡青洲が創作した薬です。

化膿性疾患や皮膚疾患、あるいはそれらの疾患の体質改善を目的として使用されます。

漢方薬の効き目は、大きく二つにわけて考えられます。
まず西洋薬と同様に症状を抑えるように働きます。
次に漢方薬の特徴として、体質を改善して二度と発症しないように治しきることを目的とします。

十味敗毒湯は、各種皮膚病の体質改善薬としても、よく使われる薬のひとつです。

消風散しょうふうさん分泌物が多く、痒みが強い皮膚炎に使われます。
患部にはかさぶたができてきたなく、地肌は赤味があり、痒くて夜も眠れないほど掻きむしるというケースにも適することが少なくない薬です。

また、この薬の適する皮膚炎は夏に悪化することが多いとされていますが、必ずしも季節にこだわらないで使われます。

頑固な湿疹やじんましん、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎などに使用され、十味敗毒湯とともに使用頻度の高い薬です。

治頭瘡一方ちずそういっぽうもともとは小児の薬でしたが、今では年齢を問わずに使われます。
虚弱でない人の、主として首から上の湿疹で、分泌物があり、痒くてかさぶたができるような症状があり、便秘傾向の人に適します。

また、顔や頸部の症状だけでなく、腋の下や陰部などの湿疹にも有効なことがあります。
この薬は慢性の症状に適することが多く、長めに続けて様子をみるとよいでしょう。
最近の治りにくい皮膚炎に使われる機会が増えています。

当帰飲子とうきいんし貧血傾向のある人や虚弱な人の乾燥性の皮膚疾患に使われることが多い薬です。
温清飲や柴胡清肝湯と同じく四物湯が基本になりますが、配合される生薬の種類によって適する症状が変わるのです。

皮膚の表面にはほとんど変化がないか、種々の発疹があっても分泌物が少なく、乾燥して時には粉をふいたようになり、痒みが強い状態に使われます。

特に高齢者に多くみられる皮膚そう痒症や痒みの強い湿疹によく効果をあらわすことが多い薬ですが、最近は若い人にも適する人が増えています。