嘔吐下痢症に効く漢方薬は?
Q 5歳の子どもがいます。その子が昨年の冬、嘔吐(おうと)下痢症で大変でした。今年もかかるのではないかと心配です。効果のある漢方薬があれば教えてください。 (32歳・女性)
A 子育て中のお母さんにとって「嘔吐下痢症」は嫌な病気です。あるお母さんは「毎年冬になると保育園で流行して、冬の間に1回は子どもが嘔吐下痢にかかってしまいます」と話していました。
原因は、秋から冬にかけてかかりやすいノロウイルスやロタウイルスによる感染症、血中や尿中でケトン体が陽性になるアセトン血性嘔吐症などが考えられます。
嘔吐が激しいときは、水を飲んでもすぐに吐いてしまうものです。ときにはピューッと噴水のように吐くこともあります。西洋医学では、吐き気止めの坐薬を使ったり、点滴を打ったりします。
水分を受け付けないときは、スポーツドリンクをスプーン1杯から飲ませ始めて、徐々に水分量を増やしていきましょう。脱水が見られる場合は、点滴が必要なこともあります。
漢方の考え方では、これは「水毒」が原因であると考えます。この水毒に対する代表的治療薬に「五苓散(ごれいさん)」があります。
使われている生薬(しょうやく)は、猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、沢瀉(たくしゃ)、桂皮(けいひ)の5種類。桂皮以外の4種類はすべて利尿作用を持つ生薬です。
江戸時代の原南陽先生の著書「叢桂亭医事小言(そうけいていいじしょうげん)には、「水が口に入ればすなわち吐く。これは、まさに五苓散が効くような症状である」と書かれています。
このように嘔吐の症状に昔から使われてきた五苓散ですが、そのほかにも、尿量減少、むくみ、頭痛、めまいなど「水」が関与したさまざまな症状に効果が見られます。
また、五苓散に茵陳蒿(いんちんこう)を加えた茵陳五苓散、五苓散と小柴胡湯(しょうさいことう)を合わせた柴苓湯(さいれいとう)なども利用されます。
顆粒なら水に溶かしてゆっくりと服用してください。 口に含んでいるだけで、のどもとで効くこともあるほどです。
ずいぶん前のことですが、私が若いころ、大変な二日酔いで吐き気と頭痛にさいなまれたことがありました。二日酔いも水毒の一種なので、五苓散を飲むと、のど元を過ぎるか過ぎないうちに一発で効いて体調が良くなりました。しかし、あのような効き方をしたのは、後にも先にも一回きりです。
師匠の故柴田良治先生に話すと「不思議だなあ。それが漢方なんだよね」とおっしゃっていたことを今でも懐かしく思い出します。