漢方は、日本の伝統医学です。
しかし、多くの人は「漢方の本場は中国」だと思っています。なぜなのでしょうか。
漢方の歴史をたどってみましょう。
日本に古い中国の伝統医学が伝わったのは大和時代。室町時代に伝わった李朱(りしゅ)医学が、日本の気候風土や日本人の体質に合わせて独自に変化したものが漢方です。
江戸時代に伝わってきたオランダ医学(西洋医学)を蘭方と呼んだのに対して、当時の日本の医学を漢方と呼んで区別したのが「漢方」という言葉の始まりです。
文明開化の風潮に流された明治初期までは、日本の医学といえば漢方でした。
しかし、明治政府が求めたものは軍事医学に優れた西洋医学だけだったのです。
明治8年には、それまでの主流医学である漢方ではなく、西洋医学中心の医術開業試験制度(現在の医師国家試験)が制定されました。
そのため、漢方は衰退の一途をたどることに…。
そんな中、漢方の必要性に気付いていた極めてわずかな人たちの間で、日本の伝統的な漢方薬の使い方は継承されました。
そして、昭和32年に漢方エキス製剤が誕生し、その後は徐々に漢方薬が見直されてきました。
しかし、一度廃れてしまった漢方の〝誤解だらけの情報〞が氾濫し、その流れを残したまま現在に至ってしまっています。
漢方と西洋医学は考え方も得意分野も異なる医学です。
西洋医学で対応が難しい病気でも、漢方が効果的なものもあります。
また、両者を併用するとよいケースもあります。
専門家に相談しながら、両者の良いところを上手に利用しましょう。