漢方薬にはさまざまな剤型があります。
日本の伝統医学である漢方薬本来の剤型のほとんどは「煎じ薬」です。
現在では見掛けることが少なくなってしまいましたが、複数の生薬(しょうやく)を組み合わせた漢方薬を煮詰めて作ります。漢方薬が全盛期だった江戸時代には、薬といえば煎じ薬のことを指していたのです。
また、煎じ薬のエキスを抽出して作られた、顆粒剤や錠剤などの剤型のものを総称して「エキス製剤」と呼んでいます。
昭和32年に小太郎漢方製薬が、粉ミルクをヒントにエキス製剤を発売したのが始まりで、現在では保険診療でも多くの製剤が消費されるようになりました。そのため、漢方薬本来の剤型がエキス製剤と思っている人も増えています。
しかし、煎じ薬とエキス製剤は全くの別物と考えた方がよいでしょう。
煎じ薬とエキス製剤の違いは、豆をひいて作るコーヒーと、インスタントのコーヒーで想像すれば分かりやすいかもしれません。
両者はそれぞれ長所と短所があります。
女性の社会進出が当たり前になり忙しい人が多い昨今、手軽なエキス製剤は重宝されます。持ち運びが簡単で、煮詰める手間もかかりません。
一方、煎じ薬は煮詰める手間はかかりますが、漢方薬本来の剤型であり、最も効果を実感しやすいかたちです。エキス製剤を試して効果が得られず、同じ漢方薬の煎じ薬で効果の違いを実感した人は少なくありません。
ただ、剤型だけでなく、原料の品質も漢方薬の効果を大きく左右する要素の一つです。
品質の良くない生薬で作る煎じ薬と、品質の良い生薬で作るエキス製剤で比較した際には、エキス製剤の方が効果を実感しやすい場合があります。
一般の方には原料の品質は分かりにくいものですから、専門家に相談しながら上手に利用しましょう。