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さりお 寿元堂薬局の漢方よもやま話

栗きんとんのクチナシと漢方の関係

栗きんとんや、たくあんの色づけに用いられるクチナシが、漢方薬の原料として使われていることはご存じでしょうか。

生薬(しょうやく)名を山梔子(さんしし)といい、山梔子を含む漢方薬の一つに加味逍遙散(かみしょうようさん)があります。

加味逍遙散は、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)と並んで女性の不調によく使われる薬で、この3つは女性の3大漢方薬と呼ばれています。

加味逍遙散は『女科撮要(じょかさつよう)』という古典に載る処方です。

『漢陰臆乗(かんいんおくじょう)』という古典には「此方は婦人一切の申分(訴え)に用いてよく効く。いまより数十年前は、世間の医者は婦人の病というとほとんどこの処方を用いたものだ」とあり、昔から女性の不調に対して使用頻度が高い薬の一つでした。

「逍遙」とは、ふらふらと定まらない様子をさし、ホットフラッシュのようなのぼせがあり、怒りやすく、嫉妬深く、逆上するかのように顔面が赤いような状態に適するとされ、月経不順、更年期障害、不定愁訴などさまざまな症状に使われてきた歴史があります。

ただし、女性によく用いられる薬でも、症状や体質が適すれば男性に用いることもあります。

実際に古い医学書にも、加味逍遙散は「男子でもかんしゃく持ちに用いてよい」とあり、性別に関係なく使われていたことが残っています。