〝秋バテ〟と漢方薬
季節の変わり目、気候の変化に適応できないと不調に。暑さで弱った体を整え、元気を取り戻す漢方薬とは
暑さもやわらぎ、やっと涼しくなってきました。
しかし、過ごしやすい気候とは裏腹に、体がだるい、食欲がない、疲れやすいなどの症状で悩 んでいる人が少なくありません。
最近では、夏が過ぎて秋へ気候が変化する時季に、このような症状が出ることを「秋バテ」と言うようになりました。
季節の変わり目というのは、気温や気圧の変化、寒暖差に体が適応しようとします。
その際に体が適応しきれない場合があり、不調が現れるのです。
昔から季節の変わり目の約18日間のことを「土用( どよう)」といい、土用は春夏秋冬のそれぞれの間で年に4回存在します。
夏の土用(どよう)の丑(うし)の日に、うなぎを食べる風習は有名です。
昔の人たちは経験から、季節の変わり目は養生すべき時季だと知っていたのでしょう。
特に近年の気候は、暑さや寒暖差が激しく、多くの人が年中何らかの不調を感じているように思います。
さて、漢方では、疲れやすい人や、普段は元気でも疲れている状態の人を、虚証の人とか虚の状態であると考えます。
虚は中身がない、空っぽという意味で、気力や体力などが足りていない状態を薬で補う工夫が重ねられてきました。
例えば、疲れやすく倦怠(けんたい)感がある場合によく用いられる漢方薬に、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)があります。
名前の通り、気を益する補剤で、胃を整え、体の弱い人の疲れを癒やし、体力増強剤として虚弱体質の改善によく使われます。
汗が出て、倦怠感、口渴などを感じるような、暑さがこたえた夏バテのような症状には、補中益気湯を工夫した清暑益気湯(せいしょえっきとう)が用いられることがよくあります。
この薬も名前のように「暑さを清め、気を補う」という意味の薬です。暑さで弱った胃腸の調子を整え、体力の回復を補い、元気を取り戻すことを目的にしています。
ここ数年、残暑が長い傾向があります。室外は暑く、室内は冷房で冷えているため、室内外の温度差が季節の変わり目のように徐々に疲れを蓄積させていくのでしょう。
また、気力も体力も衰えてしまった時に用いることが多い十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)もあります。
貧血傾向で食欲がなく、乾燥肌の傾向がある人に適することが多い薬です。
疲労は慢性になる前に十分な休養を取ることが何より大切です。
過信せず、疲れやすい時季には養生しながら過ごしましょう。