胃の不調に使われる漢方薬
食後の胃もたれ、胸やけ、胃の痛みなど、胃の不調があるときの漢方薬にはいろいろな種類があります
早いもので、今年も残すところあと1カ月を切りました。
今年は11月に入ってもなかなか寒くなりきらず、1日の寒暖差が激しい日が長く続いたせいか、胃の調子を崩している人が多いようです。
古い医学書には、胃の不調について飲食傷(いんしょくしょう)としてまとめられているものもあり、昔からさまざまな薬が工夫されてきました。
「飲食傷」は、読んで字の如く、飲食によって胃が「傷(やぶ)られる」ことを意味します。
現在でいう急性の胃炎などを指し、食べ過ぎて胃もたれがするなど、口にするものによる不都合な症状を示しています。
これから年末年始に向けてイベントが増え、胃の負担が増えやすい時期ですので、今回は胃の不調によく用いられる漢方薬をご紹介します。
これからの時期に気になるのは、暴飲暴食による食積(しょくせき)による不調でしょう。
食積とは、食べ過ぎなどで胃の消化が追いついていない状態のこと。
そのような状態によく用いられるのは平胃散(へいいさん)という薬です。
胃内に停滞しているものを平らかにして、穏やかな状態にするという名を持つ薬です。
平胃散に、消化を助けるとされる神麯(しんぎく)、麦芽(ばくが)、山査子(さんざし)を加えたものが、加味(かみ)平胃散という薬です。
平胃散よりも消化不良の要素が多い人に適することが多いですが、どちらも食後の胃もたれに使われる機会が多い薬です。
また、胃に負担がかかって胸焼けなどが気になる場合や、胃に痛みが出る場合には、安中散(あんちゅうさん)という薬がよく使われます。
中(胃)を安らかにするという薬で、平素から胃の弱い人がおなかを冷やして胃痛を感じる時や、慢性の胃の痛みを感じる胃炎、胃酸過多症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などに用いられます。
胃腸の働きが虚弱な人によく用いられるのは、四君子湯(しくんしとう)や六君子湯(りっくんしとう)です。
数ある漢方薬の中でも、これらは重要な基本処方の一つで、いろいろな処方の元になっている薬です。
普段から胃の働きが弱い人には、胃を元気にする漢方薬を持薬にするとよいでしょう。
現在は新型コロナウイルスの感染者数は以前より落ち着いているものの、コロナ禍は継続しています。
忘年会などで外食する機会は例年よりも少ないでしょうが、自宅での食べ過ぎ、飲み過ぎにも注意しましょう。