さりお 寿元堂薬局の漢方よもやま話
女性の強い味方・当帰
もうすぐ年の瀬。そろそろ当帰(とうき)の収穫も大詰めです。
当帰はセリ科の多年草です。11月〜12 月、葉が黄色になった頃に収穫した根を漢方薬の原料として用います。
昔から奈良県吉野地方で栽培されている「大和(やまと)当帰」や「大深(おぶか)当帰」と呼ばれるものが品質が良いとされてきました。
品質が良いものは、食べると苦みが少なく甘みが広がります。
当帰には補血、調経、鎮痛などの働きがあるとされ、漢方薬の基本となる重要な処方の一つである四物湯(しもつとう)に含まれています。
四物湯から派生する薬は数が多く、当帰を含む漢方薬はたくさんあります。
また、昔から婦人病薬としても知られており、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や温経湯(うんけいとう)、加味逍遙散(かみしょうようさん)などの女性特有の症状によく用いられる漢方薬に含まれています。
当帰には、名前の由来になったとされるエピソードがあります。
昔、中国の田舎に冷え症の若妻がいて、何年も赤ちゃんができないので実家に帰り、悩んでいました。
母親が心配してある薬草を飲ませ続けたところ、冷え症が治って若妻は夫のところに帰り、家族を作って幸せに暮らしたそうです。
そして、この薬草を「当帰夫」=「当(まさ)に夫に帰るべし」ということで当帰と呼ぶようになったということです。