秋も深まってきた今日このごろ。
秋の代表的な果物といえば柿ですが、柿の蒂(へた)は漢方薬の原料である生薬(しょうやく)として用いられていることをご存じでしょうか。
柿の蒂は柿蒂(してい)と呼ばれ、果実が成熟した時期のものを使います。
柿蒂を含む漢方薬には、柿蒂湯(していとう)があり、柿蒂、丁香(ちょうこう)、生姜(しょうきょう)の3種類の生薬で構成されています。
この薬は「済生方(さいせいほう)」という中国の宋の時代の医学書に載っており、現代でいう「しゃっくり」を指す、「噦逆(えつぎゃく)」の特効薬として知られています。
「しゃっくり」は横隔膜の痙攣(けいれん)ですが、昔は胃が冷えたり熱を持つなど負担がかかることが原因の一つとされていたようです。
柿蒂湯は柿蒂が主役の薬です。
古典には「柿蒂、丁香トクミ合ワシテアレドモ、コレヲ用ルニ柿蒂バカリニシテ丁字ナシニシテモヨク効クモノナリ」―とあり、柿蒂単味だけでもよく効くことがあったようです。
実際に、柿蒂は昔からしゃっくりに対する民間療法でも単独で用いられてきました。
寿元堂薬局にも「しゃっくりがなかなか治まらず、西洋医学の先生に柿の蒂を薦められた」と来局される方もおられます。
漢方と西洋医学では、得意分野が異なる場合が多くあります。専門家に相談しながら上手に利用しましょう。