Q 以前腎臓結石を破砕したのですが、また径が10㎜以上ある結石ができ、ある人から結石を溶かす漢方薬があると聞きました。本当に効くのでしょうか。 (60歳、男性)
A 腎臓の中でできる結石を腎臓結石といいます。腎臓からの尿の通り道の尿管や、膀胱(ぼうこう)、尿道などに移動したものを尿管結石、膀胱結石、尿道結石などといい、それら全てを尿路結石といいます。
痛みがないままの状態だとよいのですが、結石が移動するなど何らかの理由で痛みの発作が出ることがあります。疝痛(せんつう)という激しい腹痛に襲われることがありますが、軽い違和感程度の場合もあります。
以前は尿路結石で漢方相談に来られる人が多かったものです。しかし、衝撃波治療や内視鏡手術など、西洋医学の治療法が発達し、手軽に処理することができるようになった今では、相談に来られる人も減りました。
しかし、尿路結石に漢方が効果的なケースは少なくありません。
寿元堂薬局の経験では、7、8㎜くらいまでの大きさなら、適切な漢方薬を飲むことで排石される可能性は十分にあると思います。
漢方薬の使い方は難しく、漢方本来の効果を求めるならば専門的な知識が必要です。しかし、古くから民間で手軽に使われてきた薬草にも、ある程度の効果が期待できることがあります。
その中で最も有名な薬草がウラジロガシです。ウラジロガシは、山野に生えるブナ科コナラ属の常緑高木で、葉を乾燥したものを煎じて飲みます。そのエキスには利尿作用があり、動物実験では、膀胱内の結石が大きくなるのを抑制する作用や結石を溶かす作用が認められています。
しかし、動物実験で認められる作用が人間にあてはまることばかりではありません。また、作用があることと実際に効果が期待できることとは異なります。
分かりやすく例えると、全ての人間には物を動かす力がありますが、小さな子どもの力は弱く、大人にはかないません。子どもの力では及ばず、大人の強い力でないと動かせない重い物はたくさんあります。このように、作用があるということが必ずしも実際の効果につながるわけではなく、強い作用があるものだけに薬としての効果が期待できるのです。
ウラジロガシでは小さな結石を排石することができるかもしれませんが、漢方薬ほどの効果はありません。
尿路結石は西洋医学で処理するか漢方薬で排石し、その後でウラジロガシをお茶のようにして続けて飲むと結石の予防になるでしょう。
ご質問の方が聞かれたのはウラジロガシのエキスが配合された医薬品のことかもしれません。ともあれ〝尿路結石を溶かす〟という効果は過大な表現だと思います。