免疫力を高める漢方薬はありますか
Q 「漢方で免疫力を高めて〝未病〟を撃退しよう」と、最近のテレビや雑誌で頻繁に取り上げられ気になっています。免疫力を高める作用のある漢方薬があれば知りたいのですが…。 (58歳・女性)
A 私たちの体には、体内に侵入した病原菌や毒素などの異物に対抗する能力が備わっており、これを免疫といいます。免疫には自然免疫と獲得免疫があります。
自然免疫は、私たちの体に生まれながらに備わっているケガや病気を治す力、つまり自然治癒力の中で大きな役割を果たしています。
後天的に獲得される免疫を獲得免疫といいますが、例えば、麻疹(はしか)は一度患ったら免疫ができて二度目はかからないといわれていたように、異物ごとに免疫の仕組みをつくります。本来、免疫という言葉の意味は獲得免疫のことでした。
しかし今では、自然治癒力や抵抗力などの生体防御の仕組みの全ての意味を含めて免疫という表現をすることが多いようです。
世間ではいつの頃からか、病気を治すためや病気にならないために〝免疫力を高める〟などという表現が増えてきました。そしてそのために特定のサプリメントや健康食品、或いは漢方薬などを推奨している場面に出合うと、少し戸惑いを感じます。
特に漢方の立場では、特定の病名や症状だけを目安にして薬を選ぶことはありません。
また〝免疫力を高める〟などという特定の目的のために、不特定の人に同じものを飲んでもらうこともありません。
漢方は、個人の体質や症状などを含めた全身状態に適した薬を選用することで不調を改善したり、健康を維持したりするのです。そして、体調が改善されること自体が、いわゆる〝免疫力を高める〟ことを含めて諸々が改善された結果なのです。
つまり〝免疫力を高める〟という表現の効果はすべての漢方薬の基本なのですから、わざわざ、特別な効能と考える必要はありません。今のあなたの状態に適する漢方薬を選ぶことが〝免疫力を高める〟ための漢方薬を飲むことになるのです。
さて、未病は〝未ダ病ニアラズ〟ということで、病気になろうとしているが、まだ発症していない状態をいいます。本人に病気として気になる症状はなく、病院の検査でも異常がありません。
2000年以上も前の古い中国の書には、名医は未病を治すが普通の医者は已病(いびょう=既になった病気、つまり今ある病気)を治す、などと書かれています。
何となく疲れやすい、体がだるい、冷えを感じる、肩が凝るなど、わずかな症状でもあれば、体質などを含めた目安に基づいて漢方薬を使うことで未病を治し、病気を防ぎます。
詳しくは漢方の専門家にご相談ください。