Q 現在、妊娠5カ月の妊婦です。少し風邪気味なのですが、妊娠中は薬を飲まない方がいいと聞きました。漢方薬なら大丈夫ですか。 (29歳・女性)
A 昼間は汗ばむときもあるのに、朝晩は冷え込むようになってきた今日このごろ、今日は何を着ようかと着る服にも迷う方が多いのではないでしょうか。
寒暖の差に体がついていかず、風邪を引く人が周りに増えているようです。特に、妊娠中に風邪を引いてしまったら、こじらせず、できるだけ体に負担をかけないよう、早めに治したい気持ちはよく分かります。
西洋医学では、妊娠中の薬の投与は制限がかかることがあります。胎児への副作用の心配があるからです。
しかし、漢方薬を上手に使えば妊娠中でも心配なく薬を飲むことができます。不妊を漢方薬で克服して妊娠した人の場合なら、むしろ妊娠中も続けて漢方薬を飲んだ方が流産予防になってよいくらいです。
話を元に戻すと、妊娠中に風邪を引いた場合、現在、病院では医療用の漢方薬の葛根湯を処方されることがあるようです。
しかし、我々が修業中は、「麻黄(まおう)という生薬(しょうやく)が入っている漢方薬は、妊婦には避けるように」というセオリーを習ったので、桂枝湯(けいしとう)などを使うことがほとんどでした。時代によっても製剤によっても考え方は変わるもののようです。
とにかく風邪とひと口にいってもいろいろな漢方薬があるので、妊婦に使ってもよい薬で対応するようにします。その人の体力やどんな状態かに合わせて薬を選びます。
妊娠中の風邪に使われる一般的な漢方薬をいくつかご紹介しましょう。
- 桂枝湯(けいしとう) 中国の古典「傷寒論(しょうかんろん)」で紹介されている、最も基本的な処方の一つ。風邪に効く代表的な漢方薬です。風邪の引き始めでゾクゾク寒気がするようなときによいでしょう。これに葛根と麻黄を加えたものが、葛根湯です
- 香蘇散(こうそさん) 体の熱を発散させる香蘇散は、あまり体力がなく、胃腸の弱い人向き。風邪の引き始めによく使われます。つわりのある妊娠初期の風邪に適しています
- 参蘇飲(じんそいん) 主な生薬である人参(にんじん)と蘇葉(そよう)が生薬名の由来になっています。香蘇散と同じく、体力のない、胃腸の弱い人に適しています。風邪が長引いているときによく使われます