Q ここ数年、太り続けています。この春、会社で健康診断を受けたら、肥満と診断されました。このままいくと、病気になる可能性が高いといわれ、ダイエットしようと思っています。ところで、漢方には〝やせ薬〟があるのでしょうか (38歳・男性)
A 肥満とは、体重の重さではなく、脂肪の割合が多すぎる状態をいいます。
肥満の診断にはさまざまな方法が用いられます。
体脂肪率でいくと、男性は25%以上、女性は30%以上で肥満といわれます。最もよく使われる方法はBMIで、体重(㎏)÷〔身長(m)×身長(m)〕の数値が18・5以上25未満なら標準、25以上なら肥満1度、30以上なら肥満2度、35以上なら肥満3度、40以上なら肥満4度と分類されます。
肥満によって引き起こされる症状や病気は、高血圧、高脂血症、動脈硬化、脳卒中、心臓病、腰痛、関節痛、睡眠時無呼吸症候群…と多岐に及びます。
この肥満の原因のほとんどが、「摂取カロリーが消費カロリーより多い」というごく単純なものです。
豊かになった日本人、肥満が当たり前のように増え、子供たちにも広まっています。しかし長い将来の健康を考えると、やはり生活習慣から肥満を改善したほうがよいでしょう。
ご質問の、漢方にやせ薬はあるかという点ですが、実はなくもありません。
漢方では、肥満を、体のゆがみの一つとしてとらえ、未病を治すという見地から、肥満に対する処方を持っています。
「食毒」「水毒」によって肥満が起こると考え、体質によって使い分けます。
それでは代表例を見ていきましょう。
- 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
体力が充実していて、便秘がちで、へそを中心に膨満充実、つまり太鼓腹が目立つ人に。発汗、利尿、便通促進作用で解毒する - 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
体力がなく、色白で筋肉が柔らかく、腹はいわゆるガマ腹、水太り体質の人に。水毒があるため、浮腫や関節の腫れや痛みがあることが多い。疲れやすく足が冷え、脈が弱い人に。女性の肥満に用いることが多いが、男性にも用いる - 大柴胡湯(だいさいことう)
体力が充実し、肥満ながら筋骨がたくましく、脈に力があり、腹部が緊張している人に用いる。体力の衰えている人には使用を避ける
ただし、理論的にはやせるはずの漢方薬を服用したら、体調がよくなり、一時的に食欲が増えて太る場合もあります。
漢方は全身の調子をよくするための薬です。肥満解消のつもりで飲んだことで、他の気になる症状が消えるといううれしい副作用も得られるケースは多々あります。