腸の不調や冷えによる下痢
冷えによる下痢はもちろん、クローン病や潰瘍性大腸炎などにも漢方薬で対応できることが少なくありません
近年の気候の変化は、日本の四季がなくなるのではないかと心配になってしまいます。
今年は異例の早さの梅雨明けとなりましたが、急激な外気温の上昇と湿度の高さで体調を崩す人が増えることが予想されます。
以前から、腸の不調で寿元堂薬局にご相談に来られる人も多く、前回のよもやま話の「胃の不調」のテーマに続き、今回は「腸の不調(下痢)」をテーマに漢方薬をご紹介しましょう。
暑さが増してくると、ついつい冷たいものを過剰に摂取してしまうことが多くなってきます。また、冷房がないと過ごしにくい季節ですが、冷房で冷え過ぎることによる不調も出てきます。
西山英雄先生の「漢方医語辞典」によれば、飲食や冷えが影響して起こる非細菌性の下痢のことを泄瀉(せっしゃ)といい、伝染性・細菌性の下痢は痢疾(りしつ)といいます。
痢疾の多くは、炎症と熱を伴います。クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸炎にも共通する症状があり、漢方薬で対応できることが少なくありません。
感染性のものは原因となる細菌やウイルスを出してしまえばよいのですが、慢性的なものは症状を少しでも和らげ、早く治すことを目指したいものです。
漢方の考え方では、水分の過剰な摂取による下痢は「水毒」が原因だと考えます。この水毒に対する代表的な漢方薬に「五苓散(ごれいさん)」があります。尿量減少、むくみ、頭痛、めまいなどがある人に適することが多い薬です。
水を口にすれば吐いてしまうような症状も五苓散を用いる目標の一つで、嘔吐(おうと)下痢症に応用されることもあります。
「胃苓湯(いれいとう)」は、水様性の下痢があり、消化不良がある人に用いられることが多い薬で、食あたりの下痢にも用いられます。
冷えて下痢をしやすい人は、「人参湯(にんじんとう)」や「真武湯(しんぶとう)」がよいでしょう。どちらもおなかを温める薬で、虚弱な人によく用いられます。
「真武湯」は、鶏鳴瀉(けいめいしゃ)と呼ばれる、早朝、鳥が鳴く頃に起こる下痢に用いられることが多い薬です。
食べ過ぎなどの原因がはっきりしている一時的な下痢であれば、予防もしやすく、特別に対処しなくてもよいかもしれません。
しかし、下痢は意外に体力を奪い、長期に渡ると辛いものです。慢性的な下痢で悩んでいる場合は漢方薬を試してみてはいかがでしょうか。