名前が同じ漢方薬でも効果が違う理由とは
生薬の品質、剤型、製造法が効果に影響大
化学的に合成されて品質が均一である西洋薬と、薬の剤型や生薬(しょうやく)の品質に大きく効果が左右される漢方薬を同様に考えてしまう人が少なくありません。
名前が同じ漢方薬であれば、製造メーカーや剤型に関係なく、同じ効果が得られると誤解しているのです。
私も漢方を学び始めた時に、漢方薬を西洋薬と同様に考えていた時期がありました。
しかし、顆粒剤で効果がなく、同じ漢方処方の煎じ薬を飲むと10 分ほどで症状が治まった自身の経験や、漢方薬を服用されるお客さまの反応から教えていただくことで、効果の違いをよく実感するようになりました。
関東からはるばる寿元堂薬局に相談に来られた男性。
「アトピー性皮膚炎に悩み、東京で消風散の煎じ薬を数カ月飲んでいるが、効果が全く感じられない」とのこと。服用している消風散を見せてもらうと、明らかに生薬の品質が良くありませんでした。
そこで、良質な生薬を用いた消風散を飲んでいただくと、短期間のうちに「効果が表れた」と連絡をいただきました。
また、更年期症状で悩み加味逍遙散(しょうようさん)の顆粒剤を飲んでいた女性は「効果が感じられないので漢方の専門家を頼ろうと思った」とご来局。
お話を聞くと加味逍遙散が効いてくれそうな症状だったので、別のメーカーの加味逍遙散をお渡ししました。
後日、「この薬は何ですか」と尋ねられ、よくお話を伺うと「前に飲んでいた加味逍遙散は効かなかったが、今度の薬は飲むとすぐに効いたので別の薬だと思った」とのこと。
同じ顆粒剤でも、原料の品質や製造法の違いによって、ここまで効果が異なるものかと改めて驚いたものです。
生薬の品質というと想像しにくいかもしれませんが、身近な野菜や果物の品質で考えてみましょう。
家庭用と贈答用があるように、育て方、手のかけ方、育つ環境によって見た目や味に違いが生じます。
そして、料理の味が材料の質によって変わるように、漢方薬の効果も原料生薬の品質の良し悪しによって、大きく影響されるのです。
現在、煎じ薬の品質を吟味できる専門家は稀(まれ)といってよいほど減っています。
特定のメーカーの顆粒や錠剤を扱うだけでは、生薬を吟味することも製剤を比較することもできません。
良質な漢方薬を、漢方本来の使い方によって上手に運用する漢方家が、今以上に減らないことを切に願いながら、自身も精進したいと思います。