熱中症にも漢方薬が効くの?
五苓散や白虎加人参湯など熱中症のような症状を
改善する漢方薬はありますが専門家に相談しながら利用を
今年は異例の早さで梅雨が明け、真夏を先取りしたような暑さで全国的に猛暑が続いています。夏本番となるこれからの季節には、ますます熱中症への注意が必要です。
最近この時季になると、「熱中症には五苓散(ごれいさん)という漢方薬がよいのですか」という質問をいただくことが増えました。
五苓散は、沢瀉(たくしゃ)、朮(おけら)、猪苓(ちょれい)、桂皮(けいひ)、茯苓(ぶくりょう)という5種類の生薬(しょうやく)からなる漢方薬です。
もともとは漢の時代の「傷寒論(しょうかんろん)」という医学書に載っていた薬ですが、日本に漢方を広めたとされる曲直瀬道三(まなせどうさん)が著した「衆方規矩(しゅうほうきく)」にも記載されています。
衆方規矩には、「汗してのち、中暍(ちゅうえつ)、いきれ燥(かわ)いて、小便利せずして、咽(のど)のかわくを治す」と述べられています。
「中暍(ちゅうえつ)」とは、スポーツなどで体を動かしていて暑さに負ける熱中症のような状態のこと。つまり、五苓散は大量に汗をかき、暑さに負けて体がほてり、喉が渇いて尿が出にくくなっているような状態を改善すると書かれているのです。
これらの症状は現在においても熱中症の症状に当てはまり、実際に熱中症の予防で効果を感じる人がいたため、瞬く間に「熱中症には五苓散」というイメージがついてしまいました。
しかし、灼熱感を感じ、喉が渇いて水をたくさん飲んでも足りないような状態には「白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)」という漢方薬が適することもあります。
この薬は石膏(せっこう)、知母(ちも)、甘草(かんぞう)、粳米(こうべい)、人参(にんじん)の5種類の生薬から構成され、熱や炎症を強く抑える作用があると考えられています。
喉が渇く糖尿病や、アトピー性皮膚炎が悪化して熱がこもっているような場合などにも応用される薬です。
このように熱中症のような症状を改善する漢方薬はあるのですが、症状と体質によって適する薬が異なります。専門家に相談しながら適切に利用してください。
ただし熱中症になった時の対応は一刻を争う場合があるため、漢方薬にこだわらず適切に対応しましょう。
また、中暍のほかにも、食欲が減ったり、下痢や夏やせしてしまったりするような状態は「注夏(ちゅうか)」と呼ばれ、それぞれの状態によって漢方薬を選びます。
毎年夏に体調を崩す人は、漢方薬で体を補うのもお勧めです。