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リビング 寿元堂薬局 北山先生の漢方Q&A

夏の疲れを改善できる漢方薬は? 

Q 今までは元気で夏バテもしなかった主人ですが、今年は68歳という年齢のせいか、暑さの影響を受けて体調が優れないようです。何かよい漢方薬がありますか。 (64歳・女性)


 夏バテは昔から私たちを悩ませてきました。多くの人が夏バテで弱りますが、昨年までのご主人のように、夏バテを感じない元気な人もおられます。

しかし、今年の夏はとりわけ暑い日が続き、夏に強い人にも暑さの影響が出やすくなり、9月になっても夏の疲れが長引いている人も少なくないでしょう。

漢方が日本の医学であった江戸時代の書には、「夏バテをひと口に言えば、60歳以上の人や胃腸の弱い人が暑さに負けて煩うもの。土用の頃より何となく暑気に打たれ、体の真に熱を持ち、手足に力無く、根気も無く、元気が弱り、体を動かすことが面倒になる」などと書かれています。

土用の丑(うし)の日に鰻(うなぎ)を食べて元気を補うことがうなづける記載ですね。

今ではクーラーの普及などによって生活環境が大きく変わり、夏が過ごしやすくなったとはいえ、近年の夏の暑さには閉口します。

私が小学生の頃に〝30℃を越える猛暑〟という大きな見出しの新聞記事を見た記憶がありますが、50年以上もたった今では〝35℃以上の猛暑日〟が当たり前のようになっています。

さて、夏バテの薬として知られる「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」という漢方薬が幾つかあります。最も古いものは、「内外傷弁惑論(ないがいしょうべんわくろん)」(1247年・中国・金)という書に載っており、長い夏の湿度の高い熱気が人を蒸して、人がこれに感じて夏バテの症状になった状態を治すという、じわじわと体が弱っていく状態を改善する効能が書かれています。平素から胃腸が弱く虚弱な人の食欲を増進し、体を元気にして夏バテを予防し、回復するのです。高齢者や虚弱な人の持薬にするとよい薬です。

新しいものは、「医学六要(いがくりくよう)」(1585年・中国・明)に載り、とにかく暑さの影響で元気が弱り、体に熱がこもった状態を治すために即効を重視した内容になっています。

ほかには、一年中疲れやすいという人には「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」が適することがあり、胃腸が弱い人には「四君子湯(しくんしとう)」や「六君子湯(りっくんしとう)」を続けるとよい場合もあります。

これらの漢方薬には、体をよく補う作用のある高麗人参(こうらいにんじん)が含まれており、適宜用いると元気を回復します。

また、牛黄(ごおう)の即効性も喜ばれることが多いものです。上質の牛黄をそのまま粉末にして飲むと、疲れやすい人や活動的な人の元気をよく補います。