Q よく病気をする夫婦です。先日、夫から「漢方薬は、顆粒も煎じ薬も効果は同じだ」と言われ、私は違うと思うのですが、反論できません。本当はどうなのでしょう。(55歳・女性)
A 昔は漢方薬といえば、煎じ薬が普通でした。しかし、現在一般的に利用される漢方薬は顆粒(かりゅう)剤が最も多く、錠剤、丸剤と続き、煎じ薬が利用されることは隨分少なくなっています。
顆粒剤や錠剤の多くは、漢方薬を煎じてエキス成分を抽出したエキス剤で、コーヒーに例えるなら、焙煎豆が煎じ薬、顆粒剤がインスタントコーヒーです。エキス剤は、煎じる手間がかからない上、西洋薬に近い感覚で飲みやすく、香りも少なく、保存や携帯にも便利なことから多くの人に利用されています。
そして漢方薬の消費の8割以上を占める医療用漢方薬(医師が扱い、健康保険が適応される漢方薬)のほとんどが顆粒剤なので、利用に拍車がかかり、さらに需要が増えた結果、「漢方薬といえば顆粒剤」が当たり前と思っている人もいるのが現状です。
利用に便利な顆粒剤や錠剤の漢方薬ですが、皆さんが気付いていない大きな前提があります。
まず需要が圧倒的に多いために、漢方薬のすべての基準が顆粒剤の水準にあると誤解されていることがあります。
しかし、インスタントコーヒーでは本格的なコーヒーの味が味わえないのと同じで、エキス剤では漢方薬本来の効果を得ることはできません。
煎じ薬とエキス剤では効果に大きな違いがあるのです。
ですから、一つの漢方薬の効果を試すとき、顆粒剤や錠剤などでは効かなかった人が、同じ薬を煎じて飲むと効き始めた例は少なくありません。
もちろん、効きやすいケースでは、漢方薬の剤型や品質にあまりこだわらなくてもよい場合もあります。
しかし現在、漢方薬を必用としているのは、治りにくい病気や症状で悩んでいる人がほとんどなのです。
その人たちにエキス剤が有効であればよいのですが、煎じ薬でなければ効果が出ないケースが少なくないはずです。エキス剤を利用した結果だけで漢方の効き目を諦めているケースが多々あると思われます。
漢方薬の効果にも当然限界があります。漢方薬の効果を十分に引き出すことができる煎じ薬を飲んでこそ漢方の効果の限界を知ることができるのです。
煎じ薬とエキス剤の関係はここで述べた通りですが、これはあくまで「品質のよいもの同士を比較」したものです。
エキス剤には製造メーカーによる特徴があり、煎じ薬では原料生薬(しょうやく)の品質によって大きく効果が変わります。
剤型だけの問題ではないのが複雑です。