Q 4年ほど前、オートバイで転倒して体を強く打ちました。今でも気分が優れないことが多く、雨の降る前には体の痛みが増します。何かよい漢方薬がありますか。 (64歳・男性)
A 外傷は整形外科でレントゲンやCT検査など、画像診断によって適切で優れた処置を受けることができます。
ところが、漢方が外傷に殊の外役立つケースが多いことはほとんど知られていません。
さて、明治時代に漢方が衰退した要因の一つに軍陣医学(軍の陣営で行われた医学)が劣っていたことが挙げられます。戦場での外傷に対する応急手当が西洋医学より 劣っていたのです。
その後、この差はますます広がり、現代では外傷に対して漢方が役立つことがあることなど忘れ去られています。
しかし、つい140~150年ほど前まで日本の医療を支えてきた漢方は、多くの外傷にも対応していました。外傷に対する漢方の効果の中には、西洋医学にはない貴重なものがあります。
漢方では外傷によって血の滞り(瘀血=おけつ)を生じると捉えてよいケースが多くあります。
打撲や捻挫などによる内出血や腫れは目に見える瘀血ですが、急性の症状が治まった後にも瘀血が残ることがあり、さまざまな後遺症が出ることがあります。また、むち打ち症など、見た目も異常がなく、画像診断でも異常が見えないのに現実には症状が出るという、最初から目に見えにくい瘀血もあります。
この瘀血によって西洋医学では把握できない病状が表れ、優れた整形外科でも治しきれなくて症状が残ったときに後遺症になるのです。漢方薬で瘀血を上手に取り除くことができれば、外傷が治りやすく、後遺症を防ぐことができます。
では、相談者のように何年も前の事故による後遺症はどうでしょうか。
何十年も前の外傷による後遺症に対しては試してみなければ分かりませんが、4、5年前の事故ならば漢方で改善する可能性が十分にあります。適切な漢方薬を続けて飲むと、数カ月もしないうちに次第に症状が和らいでいくことでしょう。
外傷はまず西洋医学の治療を必要としますが、治りにくいと思ったらできるだけ早く漢方を併用するとよいでしょう。
現在も外傷に使われる漢方薬に、桃核承気湯(とうかくしょうきとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、治打撲一方(ちだぼくいっぽう)、疎経活血湯(そけいかっけつとう)、通導散(つうどうさん)、芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)などがあります。
漢方薬は体質や症状など一人一人の状態に適するものを選んで飲むことが大切です。詳しいことは専門家に相談してください。