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リビング 寿元堂薬局 北山先生の漢方Q&A

冬によく使われる漢方薬は?

Q 寒い季節になると、おなかが痛くなるなど、調子を崩すことが多いです。冬によく使われる漢方薬があったら教えてください。 (47歳・女性)


体内の冷えを取る漢方薬があります

 漢方では、寒さや冷えなどによる体調不良を「中寒(ちゅうかん)」、暑気あたりのことを「中暑(ちゅうしょ)」といいます。今でもよく使われる「中毒」が〝毒にあたる〟ことを指すのと同様に、中寒は寒さに、中暑は暑さにあたることを意味します。

中寒について、江戸時代の名医、有持桂里(ありもちけいり)は著書「方輿輗(ほうよげい)」の中で次のように述べています。

「軽症は冷えておなかをこわすなどという症状だけで済むが、重症になれば、卒倒したり、手足がひきつけを起こしたり、手足が強く冷えて脈が絶えるようなことまである」

中寒は、現代よりずっと恐ろしいものとして捉えられていたようです。

中寒の予防や改善に使われる主な漢方薬を、3種類紹介しましょう。

  • 五積散(ごしゃくさん) かつては強い腹痛のことを「積(しゃく)」と呼びました。この積を起こす原因が、血(血の滞り)、気(気の滞り)、痰(水分の滞り)、寒(冷え)、食(食毒)の5つだと考えられ、その5つを治す意味で五積散と名付けられたようです。
    五積散は、17種類もの生薬(しょうやく)を組み合わせたもの。主な効果として、体の内外を温め、血の巡りをよくします。上半身はのぼせているのに下半身は冷えている人、腰が冷えて痛むような人にも効果を発揮します。冷えによる腹痛、嘔吐(おうと)、頭痛、背中や腰の痛み、胃潰瘍(かいよう)、十二指腸潰瘍のほか、女性の月経不順や難産にも使われる、非常に応用範囲の広い薬です。
  • 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう) 手足が強く冷える人に用いる当帰四逆湯に生姜と呉茱萸を加えて、体の内部の冷えを取る効果をさらに強めた薬です。手足の血行を改善するので、しもやけによく利用されます。
  • 理中湯(りちゅうとう) 人参、甘草、乾姜、白朮(びゃくじゅつ)という4種類の生薬の組み合わせ。人参湯(にんじんとう)とも呼び、丸剤にして飲むものを理中丸と呼びます。腹痛、嘔吐、下痢、下血を伴う症状で軽重にかかわらず使われています。

浅井貞庵(ていあん)の著書「方彙口訣(ほういくけつ)」には、「中寒はおなかの内が冷えたものだ」とあります。

昔の人は、おなかや体を冷やさないよう気を付けてきました。しかし、現代では、体を冷やさないようにすることが軽んじられています。相談者も、おなかを冷やさないよう注意してください。