Q このところの暑さで夏ばて気味。食欲がなく、疲れやすく、仕事や家事の生産性が落ちています。元気に夏を乗り切るための漢方薬を教えてください。 (47歳・女性)
清暑益気湯などさまざまな薬があります
A 昔から、高温多湿で過ごしにくいのが日本の夏。漢方でも夏を快適に過ごすための薬がいろいろと工夫されました。
漢方では暑気あたりのことを中暑(ちゅうしょ)といいます。そして、漢方が全盛だった江戸時代に著された「方彙口訣(ほういくけつ)」という書では、中暑の病気を2種類に分けています。
一つは、極暑の日照りのせいで屋根の瓦が灼(や)けるように、体の内外共に熱によって心底まで灼けつくもの。この場合は体を冷やせばよろしい。
もう一つは、体の元気が暑気によって弱ってしまうもの。この場合は英気を補うことが必要です。
中暑に対して「方彙口訣」には30を超える処方が記載されています。現在もよく使われる代表的な漢方薬をいくつか紹介しましょう。
- 清暑益気湯(せいしょえっきとう) もともと中暑の中でも注夏病(ちゅうかびょう)に使われました。「注夏病」は、夏の暑さの影響を受けて気分が衰えて、頭痛がしたり、脚に力が入らなかったり、食欲が無かったり、体がほてったりして、夏やせするような状態。今では夏ばて一般に広く使われていますが、高齢者や虚弱な人、また大病をして体が弱っている人などには特によく効きます
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) もともと元気のない虚弱な人が夏の暑さに負けてさらに弱り、手足がだるい、話す言葉に力が無い、目に勢いがない、何を食べても味がしないなどの症状に使われます。補中益気湯は脾胃(消化機能)が弱って元気がない状態を治す代表的な薬です。この薬を基本に多くの薬が工夫されていることでも知られています。前述した清暑益気湯もその一つです
- 牛黄(ごおう) 夏の暑気あたりに限らず、平素から虚弱で元気がない人や、過労で元気を失った人の頼りになるのが牛黄です。牛黄は肉体と精神の両面に効果のある薬ですが、特に肉体の衰えを回復することに即効が期待できます。個人差はありますが、牛黄を飲むと元気が持続するのが分かるでしょう。早ければ1~2日で、遅くとも2週間もあれば、効果が実感できることが多いようです
- 藿香正氣散(かっこうしょうきさん) 暑い夏にさまざまな不養生をして、湿気の影響を受けて体調を悪くしたものに使われます。夏風邪、暑さによる食欲不振、下痢にも使われます
今年の夏も相当に暑く、37度、38度と体温より高い日もあります。熱中症に注意しながら、漢方薬を上手に利用してはいかがでしょうか。