Q 先日、寝ているときに急に目が覚めて胸が苦しくなりました。病院を受診すると、狭心症と診断されました。以前から不整脈の症状もあります。心筋梗塞(こうそく)になる前に漢方薬で改善したいのですが、効果はありますか。 (65歳・女性)
A 狭心症は、「胸が締め付けられる」「圧迫感がある」などの症状が見られます。不整脈は、心臓の拍動の速さやリズムが乱れるといった状態のことをいいます。
一方、狭心症が5~6分続いておさまるのに対し、もっと激しい苦しさが30分程度も続いたら心筋梗塞です。最大の原因とされるのが動脈硬化など。心臓に血液を供給する冠動脈が、動脈硬化で狭くなって血液が流れなくなり、酸素の供給が途絶え、心筋が壊死(えし)を起こします。死亡リスクの高い非常に危険な病気です。
狭心症や不整脈は、心筋梗塞につながる兆候なので、自覚症状があったら改善しておきたいものです。
中国の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」には、「真心痛(しんしんつう)では、手足冷え節に至り、心痛甚だしきは朝に発し、夕べには死す。夕べに発し、朝に死す」と、突然死の様子が出てきます。ここに出てくる真心痛は、今でいうところの心筋梗塞ではないかと思われます。
また、江戸時代の本間棗軒(そうけん)の書いた「内科秘録」には「心痛」の項目があり、胸痺(きょうひ)という言葉が登場します。これは、現代の狭心症を含むものです。
それでは、狭心症や不整脈で使われることの多い主な漢方薬について紹介しましょう。
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) 漢方の古典「傷寒論(しょうかんろん)」に記載されている漢方薬。体力のある人の、狭心症、発作性頻脈などによく使われます。体力のない人には、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)を使います
- 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) 漢方の原典である「金匱要略(きんきようりゃく)」に記されている薬。心臓弁膜症や心臓神経症に使われることがあります
- 牛黄(ごおう) 牛の胆のうにできる石のこと。不整脈に対する即効性を求めるなら牛黄がおすすめです。私の祖母が不整脈の症状があったとき、牛黄を数年飲んできれいに治ったことがあります。ただし、牛黄は良質のものを上手に利用するのがポイントで
心臓病は、原則として病院治療が不可欠。漢方を試す場合も、必ず西洋医学の医療を受けながら進めるというのが前提になります。
ただ、漢方を飲んでいる人と飲んでいない人では、飲んでいる人の方がずいぶん体調のいい人が多いようです。西洋医学に頼りながら漢方も利用してはどうでしょうか。