Q 腰痛が出て整形外科を受診すると椎間板(ついかんばん)ヘルニアとのこと。手術するほどではないと言われましたが、痛くて悩んでいます。漢方薬はありますか。 (35歳・女性)
A ヘルニアとは、ラテン語で「脱出」という意味。つまり、体内の臓器が本来あるべき位置からはみ出した(脱出した)状態です。
横隔膜ヘルニア、鼠径(そけい)ヘルニアなどさまざまなヘルニアがありますが、相談者が悩んでいる腰椎椎間板ヘルニアについて少し説明しましょう。
背骨は椎骨(ついこつ)と椎骨が連なっています。その椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板(軟骨)が変性し、飛び出してしまうのが、椎間板ヘルニアです。
腰椎椎間板ヘルニアが多い理由は、腰椎は5個の椎骨からなり、上半身を支えているため、その圧力で障害を起こしやすいからです。
症状としては、初期には腰痛があり、だんだんと片方の足にしびれや痛みが加わります。また、歩行に支障がある、立っているのがつらいなどが見られます。
咳(せき)やくしゃみでも悪化することがありますので気を付けましょう。西洋医学では、安静療法や鎮痛剤療法、注射療法、運動療法のほか、手術が行われることもあります。
ヘルニアという器質的な異常があっても、必ずしも症状が出るわけではありません。器質的異常に加えて、重い荷物を持って腰に負荷がかかったり、働きすぎて疲れていたり、冷えが体にこもっていたり、さまざまな要因が重なって、痛みという症状が出ていることが多いように思います。
ですから漢方薬は、ヘルニアそのものを治すというより、症状を軽くしたりなくしたりすることで十分役に立ちます。症状が出なくなってしまえば病気が治ったのと同じことと言っては言い過ぎでしょうか。
漢方では、椎間板ヘルニアで起こる腰痛には、血の流れが滞った状態の〝瘀血(おけつ)〟が原因となっていることが多いと考えます。
そこで、瘀血を取り去る駆瘀血作用を持つ当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、疎経活血湯(そけいかっけつとう)などが使われることがあります。
椎間板ヘルニアなど原因のはっきりしている腰痛がある一方で、原因のはっきりしない腰痛も多いものです。足腰が弱って生じる腰痛の場合、八味丸(はちみがん)という漢方薬が使われることが多く、杖(つえ)が必要な高齢者に奏功します。
また、八味丸が適するタイプで、腰が重い人、足が腫(は)れた人には、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を使います。
このように腰痛に使われる漢方薬もいろいろあるので、専門家に一度相談されてみてはいかがでしょうか。