Q 最近、ときどき目がかすんでしまい、よく見えないことがあります。年齢のせいもあるでしょうから、仕方ないとも思うのですが、目の病気にも効く漢方薬はあるのでしょうか。 (58歳・女性)
A 目の状態を良くするため、昔から多種多様の漢方薬が使われてきました。
今回は、「古今方彙(ここんほうい)」の解説書として、江戸時代に浅井貞庵先生が書いた「方彙口訣(ほういくけつ)」の「眼目」の項目をひもといてみましょう。
「目の病にはさまざまあるが、〝内障〟と〝外障〟の2つに分けることができる。内障は、黒い球(瞳)の中が病気になることで、ソコヒという。外障は、瞳の外が病気になることでウハヒと呼ぶ。日中は見えるが、晩に見えなくなるのは、〝雀目〟や〝鳥目〟という。また、まつ毛が目のふちを刺して痛むことや、眼の中に目やにがあってゴロゴロ痛むこともある。そのほか、目にチラチラと星や花のようなものが見える状態は〝眼花〟と呼ぶ」とあります。
〝眼花〟は、今でいう飛蚊(ひぶん)症のこと。人は昔からさまざまな目の病気にかかっていたのですね。
さらに「目を治そうとする人は、体の内や外も治療できる人でないと、妙技を尽くすことはできない。目だけを治そうとしても腕は上がらない。これが眼目についての心得だ」とあります。
ここが西洋医学とは決定的に異なるところで、漢方では、目の病気も全身状態を考慮して薬を選んでいたことを示しています。
「方彙口訣」では、両目がしょぼしょぼして物を見ることができないようなときは補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、両目が赤くなって痛むようなときは六味丸(ろくみがん)、心労で気血が不足して眼病になっているようなときには十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)など、たくさんの漢方薬を挙げています。
寿元堂薬局にも、眼精疲労、白内障、緑内障など目の病気の悩みで来られる方がおられます。
先日来られた緑内障の方は、煎じ薬を飲み始めてすぐに「20年来悩んでいた頭痛が楽になった」と大変喜ばれました。これは漢方薬がよく効いた例の一つで、おそらく目の疲れなどの症状も軽くなったからでしょう。
緑内障は生やさしい病気ではありませんから、1カ月や2カ月、漢方薬を飲んだからといって即効性が期待できるわけではなく、長期的に飲み続けて今より悪くならなければよい、という難しい病気です。
しかし一方で、緑内障の人の視野がある程度まで短期間のうちに広がったという著効例もあります。
また、飛蚊症は漢方薬が効果を発揮しやすく、数カ月のうちに軽くなる人がよく見られます。目の病気にも漢方を試してみる価値はあるでしょう。