Q 卵巣嚢腫(のうしゅ)が見つかり、検査の結果は良性でした。大きさは約3㎝と大きくありません。手術で摘出はせず、経過観察をしようと医師から言われましたが、大きくなるのではと心配です。漢方薬で効果はありますか。 (35歳・女性)
A 卵巣は、卵子の生成、排卵といった生殖機能の役割と、ホルモンを分泌する内分泌器官としての役割も果たしています。卵巣摘出後にホルモンバランスが崩れてしまうことがあるのも、そのためです。
卵巣の腫瘍(しゅよう)の約8~9割が、卵巣嚢腫で、良性の方が悪性より多いと言われていますが、判別が難しいため、きちんとした検査を受ける必要があります。
一般的に症状がないことが多いのですが、腫瘍が大きくなって下腹部が大きくなり気付くこともあります。通常は直径2、3㎝程度の大きさの卵巣が、卵や握りこぶし程度の大きさになったり、それ以上に大きくなるケースも見られるのです。
卵巣嚢腫だと分かっても、良性で痛みなどの症状がない場合は経過観察をすることがあります。
一方、閉経後の女性や、腫瘍が大きい場合は、開腹して卵巣を摘出することも多いようです。
漢方の世界では、血液をはじめ、体液やホルモンなども含めて「血(けつ)」として、卵巣や子宮の病気は、「血」の異常が原因となっていることが多いと考えます。この「血」の乱れを上手に整える方法によって、体調を整えるようにします。
卵巣の病気で漢方薬がよく効いた、私の初めての体験をお話しましょう。
30年以上前のこと。健康診断で卵巣嚢腫を発見したという39歳の女性が、「手術を受けたくないので、漢方薬で治したい」と寿元堂にやって来られました。その年の5月から漢方薬を飲み始め、11月の検査ではなんと卵巣嚢腫が消えていたのです。
当時の私は、卵巣の病気に漢方薬が効くかどうか自信がなかったため、大変驚きました。しかし、その後も卵巣嚢腫が改善されたケースをいくつも経験しました。
使用する漢方薬には、桃核承気湯(とうかくしょうきとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、折衝飲(せっしょういん)、温経湯(うんけいとう)などがありますが、人によって適する薬は異なり、また、効果も異なります。
開腹手術を受けるなど、西洋医学に頼った方が、早くすっきり良くなる場合もあるでしょう。「卵巣嚢腫が漢方薬でよくなります」とは、決して言えません。
しかし、腫瘍が小さくなったり、消えたりするケースがあったことも事実です。
「漢方でなくてはダメ」ときめつけて来られると困りますが、病院で経過を見ながら漢方薬を試す方法も一つの選択肢だと思います。