Q 風邪を引いて葛根湯を飲みましたが、よくなりませんでした。風邪には葛根湯が効くと聞きますが、葛根湯以外にも効果のある漢方薬がありますか。 (22歳・女性)
A 〝風邪なら葛根湯〟というイメージが日本中に定着してしまいましたが、漢方薬はその人の体質とそのときの症状に合わせて用いるものなので、誰でもいつでも、風邪に葛根湯が効くわけでは決してありません。
葛根湯は、もともと桂枝湯という別の薬が基本になっています。
桂枝湯は虚証の人や虚証の状態に使われる薬。この桂枝湯に葛根を加えたものが桂枝加葛根湯で、発汗作用が強くなり、虚証と実証の中間の状態の風邪や発熱性疾患に使われます。
この桂枝加葛根湯に麻黄を加えたものが葛根湯。さらに強い発汗解熱作用を持ち、実証の状態に使われます。
このように一つの処方に、いくつかの生薬を加えたり減らしたりすることで、異なる効果を持つ別の漢方薬が誕生します。これを加減方といいます。
一口に風邪といっても、症状はどんどん変化し、その人のそのときの病状は千差万別です。漢方では、風邪にも多くの漢方薬を用いてきた歴史があります。
正直に言うと、風邪をすみやかに治すのは結構ややこしいことです。
目に見える効き方をさせようと思ったら、そのときの症状と薬が、鍵と鍵穴のようにぴたっとはまるものでなければなりません。プロでも薬を選ぶのが難しいのですから素人が分からなくて当たり前。
でも、風邪ひとつ見ても、多くの種類の漢方薬を使い分けるのだと知っておくだけでもよいでしょう。