牛の胆石にどんな効能が?
Q 知り合いから牛の胆石が漢方薬の生薬(しょうやく)として使われると聞きました。どんな効能があるのですか。 (35歳・男性)
A 漢方では、牛の胆のうの中にできた結石(胆石)を乾燥させたものを「牛黄(ごおう)」と呼んで利用してきました。牛にも胆石ができるのかと驚く人がいます。それどころか、その胆石を薬として利用するのですから、もっと驚きです。
中国の古い書物「神王本草経」(しんのうほんぞうきょう)には、牛黄を飲み続けると元気を増して寿命を延ばすとして「不老長寿の薬」「命を養う薬」であると書かれています。
日本の「大宝律令」にも、「牛が死んだときに牛黄が見つかったら、中央政府に献上するように」と記述されています。中国でも日本でも古くから牛黄を利用してきたことが分かります。
牛黄は3000~4000頭の牛に1頭の割合でしかできないといわれるほど大変希少なもの。
数が少ないため、高貴薬の一つになっています。主に、オーストラリア、ニュージーランド、北米、南米などから輸入されています。直径1~4センチの球形または不定形。断面には赤褐色から黄褐色の層紋があります。
よく知られる効果は、鎮静、強心、造血、解毒作用。さらに、肝炎、肝硬変、心房細動、不整脈に対して用いることもあります。また、虚弱な人や疲れやすい人を元気にする作用があります。
さらに、事業家や政治家など、もともとパワフルで精力的に活動している人の強壮剤としてもよく利用されています。肉体的な疲れに即効性があるため、私自身も、疲れたときに何度も牛黄に助けてもらいました。
しかし、カンフル剤としての効果が抜群な分、注意しなければならないことがあります。
以前、こんなことがありました。
会社をいくつも興して働き詰めに働いている社長が、ダウン寸前に薬局にやってきて、牛黄を飲んで体力を回復しました。そこまではよかったのですが、牛黄を飲んで自分の能力(体力)以上に仕事ができるようになったため、以前よりさらに頑張って仕事をこなしてしまったのです。
結局、その人は過労で倒れました。ハードワークで疲れても牛黄を飲んで回復し、また疲れて牛黄を飲む…というイタチごっこの結果、限界がきたのです。薬のおかげで頑張れていることを自覚し、自分の力量以上の仕事を欲張り過ぎないことが大切だと感じました。
なお、牛黄に限りませんが、漢方薬は品質の違いによって大きな差が出ます。〝牛黄だから効く〟というものではなく、品質の良い牛黄がよく効くということも忘れないでください。