Q ダイエットを繰り返していた友人が、どうやら拒食症に陥ったようです。あまり食べたがらず、食事をとっても喉を通らず、時には吐き出すこともあるそうです。漢方薬でなんとかなりますか。 (22歳・女性)
A 拒食症は、正式には「神経性食欲不振症」と呼ばれ、食欲がなくなったり、食べたものを吐き出したり、下剤を飲んで消化吸収を避けたりする精神性の症状です。
圧倒的に女性が多く、男女比は1対9とも。それも、思春期~20代の若い女性が占め、その理由には「やせ型の女性は美しい。食べるとますます自分は太って格好悪い」という強迫観念から来ていることが多いようです。
極端なダイエットからの反動で、むちゃくちゃな食べ方をして過食症へ転じるケースもあり、このような摂食障害に悩む人口は、テレビやファッション誌などでやせ型の芸能人、やせ型のモデルが多く起用されている影響か、近年増えています。
極端に体重が減少してしまうと、意識障害や死の危険さえあります。リストカットなどの自傷行為も起こりえます。
死とまでいかなくても、無月経、倦怠感、動悸(き)、集中力低下、うつ、電解質異常による不整脈など、さまざまな全身症状を引き起こすのです。
西洋医学の現場では、この拒食症に対し、栄養補給、認知療法、精神療法、家族療法、薬物療法などが行われます。
一方、漢方では拒食症を気・血・水の異常な状態ととらえ、これらを正常にする薬を用います。
よく使われる漢方薬のひとつに、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)があります。
これは、気虚を補う四君子湯(しくんしとう)、血虚を補う四物湯(しもつとう)を合わせて黄耆(おうぎ)、桂皮(けいひ)を加えた漢方薬です。処方する目標は、生気に乏しく、疲れやすく、皮膚に潤いがなく、貧血傾向があり、寝汗、微熱、舌の荒れ、不眠などの症状がある人です。
このほか、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、人参湯(にんじんとう)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などの漢方薬が使われますが、いずれにせよ、栄養不足で弱った体には、効き目が強く現れやすいものです。まずは弱めの漢方薬を選ぶことが大事です。
ところで、漢方薬がよく用いられる神経性の症状には、このほかに、うつ病、不眠症、ヒステリー症などいろいろとあります。
漢方ではそれぞれの病名に対し、処方が決まるのでなく、その人の体質と症状(めまい、耳鳴り、肩こり、冷え、イライラ…)を考慮しながら処方します。
処方の選択は、熟練した漢方専門家にご相談ください。素人判断で漢方薬を選んで服用すると、効果が得られなかったり、副作用をもたらす恐れもあります。