お屠蘇の由来は…?
Q 実家に帰ると、元旦にお屠蘇(とそ)を飲む習慣があります。前から気になっていたのですが、どのような由来や意味があるのですか。 (22歳・女性)
A もうすぐお正月ですね。家族がそろって新年のあいさつをし、お屠蘇を飲む...。屠蘇の「屠」は「邪気を払う」、「蘇」は「体をよみがえらせる」という意味があります。この屠蘇の始まりはいつごろなのでしょうか。
ルーツは、2世紀前後の古代中国の時代にまでさかのぼります。
後漢の末から三国時代にかけて活躍した医師・華陀(かだ)は、麻酔薬を使って開腹手術をしたというほどの名医でした。
屠蘇は、その華陀が考案したといわれており、流行病の予防を目的に調合されたもの。抗生物質がまだ発明されておらず、伝染病が多くの人の命を奪った時代、病気の予防と厄除けの願いを込めて屠蘇は重宝されていたのです。
当時の処方は、白朮(びゃくじゅつ)、桔梗(ききょう)、山椒(さんしょう)、防風(ぼうふう)、肉桂(にっけい)、大黄(だいおう)、烏頭(うず)、抜契(ばっかつ)の8種類。この中で、大黄と烏頭は使い方が難しく、飲みすぎると下痢をしたり血圧が上がったりします。
そこで安心して飲めるように、現代では、この2つの薬草と抜契を除いて陳皮(ちんぴ)などを加えて作ったものが利用されています。
日本で屠蘇を飲む習慣が始まったのは、675年からという説と811年という説があり、後者が有力です。
宮中に始まった行事はその後一般化し、江戸時代には、歳末に医者のツケを支払いに行くと、医者はお返しに屠蘇散(屠蘇延命散)をくれたといわれています。この屠蘇散を酒に漬け込んだ薬酒が、一般的にはお屠蘇と呼ばれて親しまれているものです。
屠蘇散の利用方法は簡単。大晦日の夜、屠蘇散1袋を清酒(またはみりん)2合に浸しておき、元旦に取り出すだけ。飲む順番は、普通のお酒の席などでは家長や年長者が先に飲みますが、屠蘇を飲む際には年少者から年長者の順に飲んでいきます。
「これを飲めば一家に病なく、一家これを飲めばその里に病なし」と効果をうたわれた屠蘇。
新年を健康に過ごせますようにという願いを込めて、お正月に飲んでみてはいかがでしょうか。