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リビング 寿元堂薬局 北山先生の漢方Q&A

風邪なら誰でも葛根湯が効くの?

Q 風邪を引いたときに母から葛根湯(かっこんとう)を薦められ飲んでみましたが、よくなりませんでした。葛根湯は誰にでも効くのでしょうか。 (37歳・女性)


 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。新しい一年、読者の皆さんの健康に少しでも役に立つようなコラムにできたらと考えています。

さて、葛根湯は数ある漢方薬の中でも大変重要な薬の一つです。

その歴史は古く、中国・後漢時代の書物「傷寒雑病論(しょうかんざつびょうろん)」にも登場します。2000年も前に書かれた書物に載っている処方が、今でも使われて効果を上げているのは驚くべき事実でしょう。

お尋ねの件ですが、今や家庭でも職場でも「風邪みたい」「だったら葛根湯を飲めば?」という会話が聞かれるように「風邪には葛根湯」が世間の常識のようです。しかし、本当にそうなのでしょうか。

漢方では体質や症状に合わせて「証」を判断し、薬を処方します。

日ごろから虚弱な人は病気になっても症状が比較的穏やかです。このような状態を「虚証」といい、例えば風邪なら高熱が出ないで軽い症状が続きます。逆に、平素から頑強な人は、病気に対する抵抗力が強い分、激しい症状が出ます。この状態を「実証」といい、風邪の場合は発熱などの治癒反応が強く出ます。

伝統的な漢方であれば、風邪の場合も「風邪なら葛根湯」と決めつけないで、一人一人の「証」に合わせた漢方薬を出します。

では具体的な漢方薬で説明しましょう。

葛根湯は、もともと桂枝湯(けいしとう)という漢方薬が基本になっています。桂枝湯は、桂枝、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)の5種類を組み合わせたもので、〝虚証の状態〟の風邪や発熱性疾患に使われます。

これに葛根を加えたものが、桂枝加(けいしか)葛根湯といい、発汗作用が強くなって、〝虚証と実証の中間の状態〟に使われます。

この桂枝加葛根湯にさらに麻黄(まおう)を加えたものが、皆さんがよくご存じの葛根湯で、作用が強く〝実証の状態〟に用います。

葛根は、葛(くず)湯の原料になる葛の根を乾燥したもので、発熱やこりによく使われます。麻黄はマオウ科の植物の地下茎で、せきをとめたり汗を出したりする作用があります。葛根も麻黄も、強い発汗解熱作用を持つのです。

このように生薬(しょうやく)を加減することで、患者の状態にきめ細やかに対応できるのが漢方の大きな特長です。

「証」の判断はたやすくできるものではありません。専門家に相談しながら飲むことが大切です。