Q 肩凝りがひどく、冬になると余計に凝るような気がします。効果的な漢方薬があれば教えてください。 (70歳・女性)
A 肩や首の周辺の筋肉の血行が悪くなって、筋肉に乳酸などの老廃物が蓄積されると、凝りや痛みを感じます。悪い姿勢、目の疲れ、ストレス、内臓機能の低下…など、原因はいろいろです。
「肩凝りに効果的な漢方薬は?」というお尋ねですが、急性の凝りを一時的にほぐすのか、慢性的な凝りをなくすために体質改善を目指すのか、で処方が大きく異なります。
前回も述べたように、漢方では体質や症状に合わせて「証」を判断し、薬を選びます。虚弱な人の穏やかな病状が「虚証」で、頑強な人の激しい病気の症状が「実証」。
肩凝りを根本的に解消しようと思ったら、単に筋肉の凝りに注目するだけでなく、一人一人の「証」を的確に把握し、体の状態を整えることを目指します。そうすることで、体のさまざまな不調が改善され、結果的に肩凝りも良くなる場合が多いように思います。
また、漢方では「気・血・水」の異常が体の不調につながっていると考え、肩凝りも「気」「血」「水」のどの状態を整えるのかで処方が変わります。具体例を紹介しましょう。
- 葛根湯(かっこんとう) 肩凝りを一時的にほぐしたいときに使われます。風邪薬として有名ですが、実は用途の多い漢方薬で、肩凝りにもよく効きます。感冒からくる肩凝り、頭痛、下痢、体の痛み、悪寒がある人に
- 枳縮二陳湯(きしゅくにちんとう)・延年半夏湯(えんねんはんげとう) 右の肩凝りには枳縮二陳湯、左の肩凝りには延年半夏湯というように、右と左で使い分けることがあります。両方とも肩から背中にかけての凝りにも用います。いずれも胃の弱い人に向いています
- 小柴胡湯(しょうさいことう)・大柴胡湯(だいさいことう) 体力のある「実証」の人の肩凝りや、指圧などでは解消しない、しつこい肩凝りに。柴胡という生薬(しょうやく)で「気」の状態を整えます。小柴胡湯は首から肩にかけて凝っている人にも奏功。食欲不振、口や舌が乾くとか粘るとかいった場合、胃がつかえて嘔吐(おうと)、便秘、発熱を伴う症状にも用います
- 加味逍遥酸(かみしょうようさん) 疲れやすい人で貧血などの多い「虚証」の人に使われ、「血」の状態を整えます。特に中年以降の更年期の人にふさわしく、不定愁訴の見られる場合にも
腕を回す、首や肩の体操をする、目を休ませるなど、日々の工夫も大切です。熱い蒸しタオルをあてるだけでも症状が少し和らぐはずです。