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さりお 寿元堂薬局のここが知りたい漢方

糖尿病に漢方薬は対応できるか

のどが渇き、尿量が増える「消渇」が、糖尿病と同様の症状にあたるとして、漢方でも対応できます


新型コロナウイルスの流行で在宅勤務や自粛生活が続くと、運動不足になってしまいがちです。そのため、体重が増えたり、血糖値が上がってしまったりするケースがあるようです。

人は血糖値の上昇をインスリンというホルモンの働きによって調節しています。糖尿病の人は、この調節がうまくいっておらず、血糖が高い状態が続いてしまうのです。

糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があります。

1型は膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンが何らかの理由で分泌されなくなることで起こります。2型は食生活の乱れ、運動不足、ストレス等の影響でインスリンの量や働きが不足することで起こり、日本ではほとんどが2型です。

2型糖尿病の初期には自覚症状がないことが多いのですが、ある程度病気が進行すると、口の乾き、頻尿、倦怠(けんたい)感のほか、しっかり食べているのに痩せてしまうなどの症状が現れます。さらに進行すると、血管がもろくなり、網膜症、腎症、神経障害などの合併症や、脳梗塞や狭心症などを起こしやすくなります。

さて、糖尿病に使われる代表的な漢方薬に八味丸(はちみがん)があります。

張仲景(ちょうちゅうけい)が著したとされる中国・後漢の書「金匱要略」(きんきようりゃく)に記載される処方で、一斗を飲むと一斗小便が出るものによいとされてきました。

香月牛山(かつきぎゅうざん)の著「牛山方考(ぎゅうざんほうこう)」(天明2年)にも、「渇シテ小便多キ者ニ竒効アリ」とあり、そのような症状を昔は「消渇(しょうかつ)」と呼んでいました。

「牛山方考」には、中国・漢の武帝が消渇を患ったときに、張仲景がこれを使って効果を得たという記載もあります。

漢方は、症状を見ながら薬を選ぶため、この「消渇」が糖尿病の症状にあたるとして対応することができるのです。

自覚症状がなく、健康診断や人間ドッグで初めて糖尿病と診断されるような初期の場合、症状がつかみにくいことがありますが、通常気が付く症状や体質を考慮して薬を選んでいきます。

糖尿病は空腹時血糖や尿中の糖などに加え、過去1、2カ月の血糖値を反映したヘモグロビンA1cという検査値を指標にします。焦りすぎず最低でも1、2カ月は様子をみるとよいでしょう。

ただし、血糖値は食事が大きく影響します。漢方薬を飲みだして検査値が改善しても、油断せずに不摂生には注意しましょう。