さりお 寿元堂薬局の漢方よもやま話
この時季の不調の原因と漢方薬
私が子どもの時は、梅雨は「しとしと」と雨が降るイメージがありました。
しかし、近年の梅雨は激しい雨が急に降りだし、その後に晴れると雨が一気に蒸発して、なんともいえない湿気の不快感が残ります。
普段は特に不調を感じていなくても、この時季の独特の気候にやられて、けんたい感を感じたり、下痢、食欲不振、頭痛や頭重などで悩んだりする人も少なくないようです。
そのような症状に用いられてきた漢方薬の1つに、藿香正気散(かっこうしょうきさん)があります。中国・宋の時代の太平恵民和剤局方(たいへいけいみんわざいきょくほう)という古典に載る漢方薬です。
その時代には、山嵐瘴 気(さんらんしょうき)といって、暑く湿気が多い山林の気候にあてられて生じる風邪のような症状や暑気あたりなどに用いられていたようです。
また、漢方薬の使い方 を記した江戸時代の書 「方彙口訣(ほういくけ つ)」には、暑さが厳しい気候の時に冷たいものや生ものを摂取し過ぎたり、寝冷えで風邪をひいたりなど不養生で生じる症状にも応用されたことが述べられています。
現在でも、暑さが増してくると、口当たりがよい冷たいものばかりを食べて食欲が落ちたり、扇風機や冷房で体を冷やし過ぎて体調を崩したりする人は多いものです。
この時季なかなか自分では改善しにくい不調は、漢方薬の力を借りてもよいかもしれません。