ホーム掲載記事さりお寿元堂薬局のここが知りたい漢方

漢方には、弱っている状態を補う〝補益〟という概念が
あり、加齢が影響する症状には漢方薬がよく役に立つ


明けましておめでとうございます。良いお正月を過ごされましたか。
今年も漢方の情報をお伝えしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、日本には、その年の健康や幸せを願って行われる風習が多く残っています。

お正月に関わるものだと、家族の健康と子孫の繁栄や豊作などの祈願の意味が詰まったおせち。一家の健康を願って飲むお屠蘇(とそ)。お供えしていた鏡もちを下ろして、無病息災を願って食べる鏡開き。

昔から健康に過ごすことは、皆が願ってやまないことでした。そして日本では、長きにわたって漢方がさまざまな病気や症状に対応してきました。現在では衛生状態が改善されるとともに、発達した西洋医学のおかげで、改善される病気や助かる命が増えました。
西洋医学にはない漢方ならではの特徴ある効果も、多くの病気や症状の改善に役立っています。

加齢が影響する症状も、漢方が役に立つことが多い分野の一つです。

年を重ねると、多くの場合で徐々に元気がなくなり、若いときのように踏ん張りがきかなくなります。
江戸時代に最もよく使われた処方集「古今方彙(ここんほうい)」には、補益という項目があります。
補益とは、弱っている状態に応じて、さまざまな方法で身心を補い元気を取り戻すこと。

「補益」の項目には、「老人モ気血(身心)ノ弱リ易キ故ニ此処ニ附ケテ有ルゾ」として、高齢者に多い症状の薬の選び方も記されています。

そして、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、帰脾湯(きひとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)などの薬が並び、その他にも多くの薬が収載されています。

体の衰えに関しては加齢が大きな影響を及ぼすことが多いのですが、最近は年齢を問わず年相応
の元気がない人が増えているように思います。
普段体力があるような若い人でも、体が弱っている場合には補益の項目に載っている薬が必要なケースもあります。

また、全体的な症状に限らず、加齢によって腰痛や頻尿などの部位が限定された症状も出てきやすくなります。
その場合は、補益とは異なる視点で、それぞれの症状と体質によって適する薬を選ぶ必要があるため、専門家で相談しながら適切に漢方薬を試しましょう。

何十年も付き合う自分の体ですから、大切にしていきたいものです。