気の停滞による手足の冷えを改善する当帰四逆湯
底冷えする1月。昨年暖冬だった分、余計に寒さが身に沁みます。
冷え症や冷えて悪化する症状の相談が増えていますが、最近はしもやけに関する相談が特に多くあります。
1075処方もの漢方薬が記載されている「古今方彙(ここんほうい)」という江戸時代の処方集があります。
「古今方彙」には「中寒(ちゅうかん)」という項目があります。
食べ物の毒に中(あた)る「食中毒」や、暑さに中る「熱中症」などのように、寒冷にあてられた時の症状に用いられる漢方薬が記載されています。
その中の一つに当帰四逆湯(とうきしぎゃくとう)という薬があります。
四逆湯の四逆とは〝四肢〟の「四」に、〝体内の気が停滞した状態〟を表す「逆」という文字を合わせた名前です。気の停滞による手足の冷えを目標に用いられます。
当帰(とうき)、桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)、細辛(さいしん)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、木通(もくつう)から構成されており、体力がなく、手足が冷え、おなかが冷えるとガスがたまり腹満し、下痢を起こすような人に適することが多い薬です。
昭和初期から発刊されていた『漢方と漢薬』の投稿の中で、ある先生が「しもやけの症状が出ている患者に当帰四逆湯の煎じ薬で対応したところ皆改善した」と書かれていました。
漢方薬は体質や症状によって薬を選ぶため、本来であれば「しもやけには当帰四逆湯」のような使い方はしません。
このような使い方で効果が得られていたのは、煎じ薬で対応していたことが大きく関係していたのではないでしょうか。
現在は時間に追われて手軽なエキス製剤を選択する人が多いようですが、寿元堂薬局でも、同じ薬をエキス製剤から煎じ薬に変えた途端に効果が表れ始めた例は少なくありません。
また、現代は、昭和と比較して、生ものや冷たいものを過度に飲食するようになっている上、冷房や冷蔵庫の普及で生活環境も変化し、より体が冷える状況といえます。
当帰四逆湯よりも冷えが強い場合は、当帰四逆湯に呉茱萸(ごしゅゆ)と生姜(しょうきょう)を加えた「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」を試してみてもよいでしょう。
すでにしもやけで悩んでいる人にも漢方薬で症状の改善が期待できます。
また、毎年しもやけになるようなら、寒くなる前から予防的に服用すると冬を快適に過ごせることが多いようです。
症状に合わせて、上手に漢方薬を利用しましょう。