漢方の世界では、その人の症状や体質など全身の状態を考慮して漢方薬を選びます。
ほとんどの場合は1種類の漢方薬で対応できますが、対応が難しい場合には2種類飲むことがあります。
そんな時に「2種類を一緒に飲まない方がいいですか」とよく質問されます。
漢方薬の種類と目的によるため一概には言えませんが、同時に服用するのは避けた方がよいでしょう。
ただし、意図的に2種類の漢方薬を同時に服用することもあります。
皮膚が乾燥して痒(かゆ)みがひどく、患部に熱感があったり、のぼせ傾向にある人に適することの多い「温清飲(うんせいいん)」という漢方薬があります。
温清飲は、「四物湯(しもつとう)」(当帰・芍薬・地黄・川芎)と「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」(黄連・黄芩・黄柏・山梔子)という2種類の漢方薬を組み合わせた処方です。
四物湯は血行をよくし、貧血を補い婦人病でもよく用いられる薬。また、黄連解毒湯は顔が赤く、胸や胃に熱を持ち不安の強い人に用いられることの多い薬です。
この2種類は全く異なる人に適する漢方薬ですが、同時に服用すると温清飲という漢方薬に生まれ変わります。
錠剤や顆粒剤(エキス製剤)の種類は限られるので、2種類の漢方薬を組み合わせる場合もあるのです。
複数の漢方薬を服用するときには、漢方薬の専門家に相談しながら正しく服用しましょう。