Q 毎年、梅雨ごろからアトピー性皮膚炎を発症し、本格的な夏場は症状がピークに。特に、かゆみで悩んでいます。 (30歳・女性)
A 最近は、アトピー性皮膚炎や慢性じんましんなど、治りにくい皮膚病がますます増えているようです。ひと昔前なら、塗り薬を塗っておけば良くなったような症状でも、手こずることが増えてきました。また、夏場は皮膚炎の状態が悪くなる人が多くなります。
一時的な症状であれば西洋医学の薬で抑えればよいでしょう。しかし、西洋医学の治療を行ってもどうにも治らなくて、漢方を求めてくる人も少なくありません。
漢方薬を使う場合、一時抑えの作用は、西洋医学の薬ほど強くはないことを念頭に置いておく必要があります。場合によっては、ステロイド剤などの薬を併用し、症状の改善を見ながら、徐々に漢方薬だけに切り替えていくのもいいかもしれません。
漢方には、慢性の皮膚の病気や症状に有効な薬が多数あります。
私が編集した「黙堂柴田良治処方集」には、皮膚病に使用される96種類もの漢方処方が収載されています。漢方薬の選び方は難しく、効果を出すためには、症状と体質に適した漢方薬でなければなりません。
夏は、皮膚炎が悪化する人が多いことを考慮し、今回は、夏に悪化するタイプの皮膚炎によく使われる「消風散」(しょうふうさん)を紹介します。
「風」を「消す」と書く消風散は、体の表側から侵す病因を表す「風」を、散らして消すという意味が込められています。
分泌物が多く、かゆみの強い皮膚炎に使われることが多く、患部にはかさぶたができて、地肌は赤みがあり、かゆくて夜も眠れないほどかきむしるというケースにも適する薬。頑固な湿疹(しっしん)にも使用され、応用範囲の多い薬です。
消風散のエピソードを一つ紹介しましょう。
関東から、30代の男性がはるばる寿元堂薬局にやって来られたときのことです。「アトピーに悩んでいて、数カ月間、消風散の煎じ薬を飲み続けているが、効果が全く感じられません」とのこと。
彼が飲んでいる消風散を見せてもらったところ、明らかに品質がよくありませんでした。
そこで、品質の良い生薬を組み合わせた消風散に替えて飲んでもらうと、まもなく「効果が現れるのを実感した」と連絡が入りました。生薬の品質の良し悪しが効果に大きな違いをもたらすことの一例です。
皮膚病は、治りにくい病気だけに根気が必要です。
しかし、頑固な皮膚病には、時間はかかっても体質改善をすることで根本的に良くなっていきます。漢方を試す価値はあるでしょう。