Q 夏も冬も異常に汗をかきます。犬の散歩で外を歩くと、全身から汗が吹き出て、バケツの水をかぶったように、びしょ濡れです。病院では異常が見つかりませんでした。漢方薬で改善されますか。 (63歳・女性)
A 汗をかくのは、体表から水分を蒸発させて熱を逃がし、体温を下げるため。体の温度を一定に保つために、人間の体にとって必要かつ大切な機能です。
しかし、相談者の話では、少し歩いただけで下着までびしょ濡れになるほど汗をかき、外出もおっくうになるとのこと。今年の夏は特に暑かったので大変だったことでしょう。
必要以上に汗をかく症状を多汗症といい、全身性多汗症と局所性多汗症があります。
全身性多汗症は、発汗を促す交感神経が敏感になり過ぎて起こると考えられ、生活習慣や睡眠の乱れ、強いストレス、肥満など、原因はケースバイケース。
これらが複合的に重なっていることもあり、「これが原因」と特定するのは難しいのが現実です。更年期障害、中枢神経系の異常、甲状腺機能亢(こう)進症などの病気が原因で起きていることもあります。
一方、局所性多汗症は、手のひら、足の裏、わきの下、顔だけなど部分的に汗をかく状態。緊張したときに症状が出るなど、精神的な原因で起こるケースも見られます。
西洋医学の治療法としては、精神安定剤などの内服、手術による交感神経のブロックなどさまざまですが、決め手がないようにもみられます。
漢方では、多汗症に対して、黄耆(おうぎ)という生薬(しょうやく)の入った漢方薬をよく使います。体表の水分を整理して皮膚の水毒を取り去る作用があることが知られている黄耆は、汗を調節する優れものです。
その黄耆を中心に構成して多汗症によく使われるのが、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)。
これは、漢時代の古典「金匱要略(きんきようりゃく)」に掲載されている処方です。水分の循環を良くする蒼朮(そうじゅつ)という生薬も含まれており、黄耆の作用を助けます。色白で、いわゆる水太りの女性に適します。また、疲れやすい、尿が少ない人、風邪の後で悪寒がして発汗が止まらないという場合や、肥満症、むくみ、関節炎などに使われることもあります。
そのほか、疲れやすくて汗をかく人には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、夏になると発汗が止まらない人には清暑益気湯(せいしょえっきとう)、体力が衰えて貧血のあるような人には十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)といった具合に、体質や状態に応じて利用されます。
急に多汗症になった人は重い病気が隠れていることもあるので、病院で調べてもらいましょう。その上で漢方薬を試すことをお薦めします。