Q 最近、動悸(どうき)がして不安感が募ります。病院では自律神経失調症と言われました。精神症状に効く漢方薬はあるのでしょうか。 (68歳・女性)
A 「自律神経失調症」とは、肩凝り、頭が重い、疲れやすい、イライラするなどの不快症状があるものの、検査では器質的病変が認められないような状態。
一時期、この自律神経失調症という病名の人が増えたことがあります。
精神科や心療内科の専門家が少なかった時代、多くの精神症状が十把ひとからげに自律神経失調症として診断される風潮があったからです。
今では心療内科が一般的になり、「不安障害」「パニック障害」などにも分類されるようになりました。心の病気と一口に言っても西洋医学での分類は非常に複雑で、病名もたくさんあります。
しかし漢方では、病名にこだわることはなく、症状や状態で薬を選んでいきます。今回は、症状別に一部の漢方薬を紹介してみます。
- 温胆湯(うんたんとう) 精神が弱って、ちょっとしたことでも驚きやすくなっている状態の人に。この薬が適するのは、胃の働きが弱い人、不安感の強い人で
- 甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう) たいした理由もないのに悲しんだり、泣いたりする人に
- 帰脾湯(きひとう) 心配事や考え事をし過ぎて心が疲れ、物忘れが多くなったり、胸騒ぎがあったり、眠れなかったりする人に
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) 体力のある人で便秘傾向があり、胸やおなかの周辺で動悸をうつような人。癇(かん)が高く、怒りっぽい人、疑い深い人にも。同じような症状の人で、虚弱な人には、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)が向いています
- 酸棗仁湯(さんそうにんとう) 疲れすぎて眠れなくなったという人、普段から疲れやすく不眠症という人に
- 釣藤散(ちょうとうさん) やや虚弱傾向で、癇の高い人に。のぼせやすい人の神経症状にも
- 抑肝散(よくかんさん) 「怒気があればこの薬が効かないことはない」と書いてある古典もあるほど、この薬は怒りっぽい人によく使われてきました。体力は中程度から少し虚弱な人に適し、気持ちを鎮める作用があります
「精神症状にも漢方薬が効くの?」と不思議がる人がいますが、心の病気に対しても体質と症状に合わせて、昔から実に多くの漢方薬が工夫されてきたことが分かります。
西洋医学の薬と併用もできるので専門家とよく相談しましょう。