漢方の存在価値とは?
Q 漢方薬を試してみたいのですが、私の夫は「西洋医学と漢方とを比べると西洋医学の方が科学的で進んでいる」と言い張り、漢方薬に否定的です。漢方の長所や存在価値をうまく説明できないので教えてください。 (35歳・女性)
A いくつか例を挙げてみましょう。ある女性が、西洋医学の不妊治療を長年続けたものの妊娠せず、相談に来られました。温経湯(うんけいとう)の煎剤を続けて服用し、5カ月後から桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の丸剤を併用。彼女は間もなく妊娠しました。
また、関節リウマチで悩み、病院ではなかなか治らないと私の薬局にやって来た方がいます。その女性は家で毎日漢方薬を煎じて飲んだところ、しばらくたって関節の痛みが完全に消えたと、笑顔で報告してくれました。主治医の先生は信じられないという顔をしていたそうです。
西洋医学の発達した現代では、「西洋医学の治療は、すべての病気において最も優れている」「西洋医学は科学的だから正しい」という考え方がまん延しています。
しかし現実には、冒頭で述べたように、権威のある病院にかかっても長年治らなかった病気が、漢方を試してみてウソのように良くなったという例はいくつもあるのです。
逆に、漢方で治らない病気が西洋医学で治るケースも多々あります。ですからどちらが優れているとは言えないのです。
世の中の病気を大別すると
①西洋医学がよく効く病気
②漢方がよく効く病気
③どちらもよく効く病気
④どちらも効かない病気
の4種類があると考えることもできます。
だから、西洋医学でもよいし、漢方でもよいし、両方を併用してもよい…このように選択肢が広がることで治る可能性も広がります。
西洋医学では十分対応できない場合にも、漢方が効果を発揮するケースが少なからず含まれていることは、漢方の存在価値だといえるでしょう。
ほかにも挙げてみると、一つは、副作用の心配が少ないこと(ただし、漢方医学の伝統に従い、一人一人の体質や症状に適した漢方薬を用いることが条件)。
もう一つは、漢方は、そのときの病状を一時的に抑え込もうとするのではなく、体質を改善して、体全体の調子を整え、病気を根本的に治す効果が期待できることです。
では、デメリットは何でしょうか。
漢方は西洋医学の薬のように強力な作用を持つものは少なく、優れた外科の手段もありません。また、さまざまな歴史的変遷で漢方本来の伝統的な使い方を知る漢方家が非常に少ないのが現状です。
以上のように漢方には長所も短所もあります。そして得意な分野、不得意な分野もあります。
多くの人が、本来の漢方について関心を持つことがまずは第一歩ではないでしょうか。