最近、尿が出にくくて困っています
Q トイレに立ってもなかなかオシッコが出ません。男性は年を取るとなりやすいと聞いてはいましたが、私もまた、「前立腺肥大症」と病院で診断されました。手術を受けなければならないほどひどくなる前に、何とかしたいのですが。 (55歳・男性)
A オシッコがすぐ出ない、尿量が少ない、さっき行ったばかりなのにまたトイレに行きたくなる(頻尿)、特に夜間トイレに行く回数が多い、残尿感がある、股間に圧迫感がある、尿を漏らす…など、男性は高齢になると排尿障害を起こしやすく、これらは前立腺肥大症の症状です。
50歳以上に多く、特に70歳以上では、10人のうち6~7人の高率で起こります。
前立腺とは、膀胱(ぼうこう)のすぐ下にあるクルミほどの大きさの臓器で、年をとるにつれて肥大化し、尿道を圧迫するために排尿障害が起こるのです。放っておくと膀胱にたまる尿量が増え、感染症や腎不全になる可能性もあります。
この前立腺肥大症は、漢方で効果が見られることの多い病気の一つ。当薬局でも相談件数が多いものです。
漢方では、前立腺肥大症のような状態を「腎虚(じんきょ)」と呼び、腎臓、膀胱などの泌尿器、副腎、生殖器などの機能が衰えていると考えます。
昔から腎虚に効果をよく上げてきた漢方薬 の一つが「八味丸」です。
次の8種類の生薬をハチミツで練って丸薬にしたもので、1回に15~25丸を服用します。
八味丸の成分は・・・
- 地黄(じおう)
ゴマノハグサ科カイケイジオウの根 - 山茱萸(さんしゅゆ)
ミズキ科サンシュユの果実 - 山薬(さんやく)
ヤマノイモ科ナガイモの根茎 - 沢瀉(たくしゃ)
オモダカ科サジオモダカの根茎 - 茯苓(ぶくりょう)
サルノコシカケ科マツホドの菌核 - 牡丹皮(ぼたんぴ)
キンポウゲ科ボタンの根皮 - 桂皮(けいひ)
クスノキ科ケイの樹皮 - 附子(ぶし)
キンポウゲ科カラトリカブトの根
八味丸は高齢者に処方されることが多く、下半身の疲労脱力感、腰痛、手足のほてりや冷えなどにも使われます。
その一方で、体力が充実している人や高血圧の人、胃の弱い人などに八味丸は合わないことがあるので、注意が必要です。
そのほかに前立腺肥大症に用いられる漢方薬としては、牛車腎気丸、六味丸、猪苓湯、五淋散、桂枝茯苓丸、騰龍湯などがあります。
専門家に相談し、体質・症状に合わせて上手に利用すれば副作用の心配もなく効果的です。